これからの安全保障環境

2020.03.26

これから先の安全保障環境はどうなっていくのでしょうか。
 
米中の二極化はさらに進みます。軍事面だけでなく、外交や経済、あるいはインターネットなどの技術面でも米中の競争は激しくなります。
 
軍事面でのアメリカの優位は次第に失われ、グローバルコモンズと呼ばれる公海や宇宙などを実質的にアメリカが支配した時代は終わると指摘する論者もいます。
 
中国は、さらに軍事力を拡大し、第二列島線の内側での他国の活動拒否を企図するようになるかもしれません。
 
米中は、大規模な衝突を起こさないように軍事的なエスカレーションを慎重に管理する一方で、グレーゾーン有事やサイバー戦や心理戦といった有事に至らないレベルでの活動を活発化させます。
 
中国は、日本を含むアメリカの同盟国に対して様々な非軍事的手段で圧力をかけ、有事には米軍が本格的に戦略を投入する前に既成事実を作り上げてしまうことを狙っているとの見方もあります。
 
技術面の優位が将来戦闘における優位に直結するようになり、先進的な民生技術をいかに軍事面に生かしていくか、新しい技術への感度が求められるようになります。また、軍民両用の技術開発が重要となります。
 
中国は、毛沢東時代から、「人民戦争」を掲げ、民衆の活用を軍事ドクトリンに位置づけてきました。
 
さらにそれを発展させた「軍民融合」戦略の下、軍事拡大と経済発展をコインの裏表として実現を図っています。
 
平時においては経済発展を軍の近代化に活用し、有事において民生技術を軍事に活用できるように準備を進めています。
 
さらに中国は、戦争の形態が物理的な破壊からサイバー領域などの活用による情報優越の獲得が不可欠となる「情報化戦争」を経て、「智能化戦争」を戦う準備をしています。
 
「智能化戦争」では、戦争の手段がサイバー戦、心理戦、世論戦など多様化し、国家間の紛争もサイバー領域、宇宙領域の活用が進んで、平時と有事の境界が曖昧化します。
 
また、非伝統手段には大規模な武力が必要とされず、主体が明らかにならない戦闘が増加していきます。
 
AIやIoT技術を活用して兵器の無人化、スマート化が進み、AIを指揮統制に活用して情報の高速処理を行うことで、無人機による超長時間の警戒監視が可能になり、極超音速かつ超長射程のミサイルの導入が進むなど時間的、空間的な制約が縮小していきます。
 
空母をドローンによるスウォーム攻撃できるようになるなど、大型で高価な兵器を低価値の武器で攻撃できるようになるでしょう。
 
レーザーや高出力マイクロ波などの指向性エネルギー兵器が開発され、一発あたりの単価が極めて安価になるでしょう。また、武器の製造に3Dプリンタなどが活用されるようになるでしょう。
 
人命損失への抵抗感が増大し、兵器の無人化、自律化が進みます。そしてそのため、紛争へのハードルが下がる可能性も大きくなります。
 
更に将来的には、空母や第五世代戦闘機などの高価値の兵器システムをA2AD圏に侵入させるリスクが大きくなり、一つのアセットに機能を詰め込むよりも、システムを分散化、非集権化させるようになるでしょう。
 
そのため、紛争は軍事分野から非軍事分野まで取り込んだ形で領域が広がり、経済や世論への影響の優位の獲得も争われることになります。
 
とくに人口が減少する日本では、兵器の自律化、無人化に向けた技術の獲得が急務になります。



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