2002年6月14日号

2002.06.14

防衛庁のリスト問題で、何が問題なのか、というお問い合わせを何人かの方からいただきました。整理してみたいと思います。

行政機関電算処理個人情報保護法(以下略して現行法)という法律があり、今回の出来事は、この法律に違反しています。

防衛庁の三等海佐が、情報公開を請求している者に関して、情報公開業務に必要な範囲を超えた個人情報(受験生の母、反戦自衛官など)を収集したことは、情報公開法上、必要とは考えられず、不適切な行為です。(ただし、この行為そのものは、現行の行政機関電算処理個人情報保護法に違反した行為ではありません。)

この自衛官が、パソコンで作ったリストに新たな欄を設け、自分が調べた受験生の母とか反戦自衛官という、情報公開業務を遂行するというリストの本来の保有目的を逸脱する個人情報を記入したことが、現行法の第四条第二項、個人情報ファイルへの記録範囲の制限、に違反した違法行為にあたります。

情報公開請求者の住所、氏名、請求文書などをリスト化することは、情報公開業務に必要なものですから、問題はありません。また、そのリストに、請求者が自ら申し出た個人情報を付け加えたとしても、それが情報公開業務というリストの目的の範囲内であれば問題はありません。

現行法では、行政が持っている電子化された(コンピュータ上の)情報のみがこの法律の対象で、紙の上の情報は対象になりません。(正確には、コンピュータからプリントアウトされたものは対象になりますが、それをコピーしたものは対象から外れます)。手書きの文書は、この法律の対象外です。
仮に、今回、三等海佐が作成したリストが手書きであれば、現行法違反にはなりません。
現行法では、電子化された情報で、一定の形式を持ったリストが対象となるため、例えばエクセルで作った表は、この法律の対象となりますが、ワードで、この個人情報が文章として書かれていれば、この法律の対象外です。ただし、ワードでも、タブなどを使った表形式のもののように体系的になっていれば、法律の対象となるリストと考えられます。

さらに、この三等海佐が、リストを、情報公開業務と関係のない部署の職員に配布した行為は、現行法十二条、業務で知りえた個人情報をみだりに他人に知らせてはいけない、に違反しています。
もし、この三等海佐が、職務の遂行の一環として、個人情報が他の部署の職員の目に触れるように取り扱っていれば、現行法九条、個人情報ファイルの目的外利用の禁止、に違反したことになります。
つまり、ファイルを必要のない他部署に見せる行為が、組織の事務として行われていれば、第九条違反、個人の暴走であれば第十二条違反です。

例えば、警察などは捜査で個人情報を集めているではないか、とか、防衛庁が、防衛情報に興味を持つ人間の背景を調べるのは当然ではないか、というご意見もありました。
警察が捜査で情報を収集するのは、業務として行っているので、違法ではありません。
また、自衛隊には、調査を業務とする調査隊という部署があります。
こうした部署の職員が、業務として、調査し、リストを作成することは違法ではありません。
今回の三等海佐は、情報公開室に所属し、情報公開が担当業務であり、防衛情報に興味を持つ人の背景を調べることは、全くその担当業務から外れています。そのため、情報公開業務に必要な個人情報以外の個人情報を集めて、これを電子化されたリストにしたことは、法律違反になります。

現行法には罰則規定がありませんが、全て懲戒処分の対象となります。

現在、国会に提出されている行政機関の個人情報保護法案では、電子化された文書だけでなく、紙の情報も全て含まれるようになります。
現行法を大幅に強化した、この新しい行政機関個人情報保護法案の早期成立が必要だと思います。



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