2002年3月20日号

2002.03.20

ムネムネの議員辞職勧告決議案について。

もし、議員辞職勧告決議案が本会議に上程されたら、私は、議場を退場することになると思います。
もし、私が、国会議員でなければ、この決議案に賛成するでしょう。国会議員であっても、心情的には反対はしません。しかし..

先日、韓国を訪れたときに、西大門の刑務所跡に行きました。日本の植民地時代に作られた刑務所ですが、八十年代まで、実際に使われていました。そこにつくられている植民地時代の拷問を再現した蝋人形を見ているときに、我々に同行してくれた韓国の若手の国会議員が、僕も軍事政権に逮捕されたときにこれをやられたんだ、と話してくれました。
要するに、民主主義というものは、常に気をつけていないと、風化します。あっと気が付いたときには、表面的には民主主義でも、似て非なるものになっていることがあります。だから、我々は、常に民主主義を守る努力をしなければならないと私は思っています。

国会議員のスキャンダルがこれだけ続き、国会議員に対する信頼感が薄れていることは、よく認識しています。ただ、国会が日本国憲法の定める国権の最高機関であります。国会議員は、国民から選挙で選ばれ、その任に当たります。そして、この国の民主主義を守るために、国会議員の地位は、守られています。例えば、国会の会期中は、院の同意がなければ議員を逮捕することができない不逮捕特権などがよい例です。

院内での行いにより、国会議員が除名されることがあります。その場合は、院の三分の二の同意が必要です。

今回の議員辞職勧告決議案には、二つの無理があると思います。一つは、鈴木宗男代議士の数々の疑惑が本当に疑いがないものなのか、ということです。いくつかの疑惑に関して言えば、個人的には、私はクロだと思っています。しかし、法治国家の我が国では、どんな疑惑も推定無罪というところからスタートし、はっきりと立証された段階で、クロになります。そのためには、歴代外相をはじめ、きちんと宣誓の上で証言を求め、事実関係をもっとはっきりとすることが先だと思います。そして、これは、予算委員会や外務委員会などではなく、決算行政監視委員会、あるいは該当するならば懲罰委員会で(あるいは特別委員会を設置してでも)、本当にきちんと時間をかけて、行うべきだと思います。そして、疑惑が疑惑ではなく、明確になる必要があります。もしそうなったならば、私は、そこで刑事告発すべきだと思います。

二つ目は、除名するのに三分の二が必要であるのに対し、議員辞職勧告決議案は、過半数でよいということです。
正式な除名のルールは三分の二なのに、過半数で、決議案が通るというのはおかしいと思います。勧告決議案であっても、決議が通れば、これは非常な重みを持つことになります。
そして、これが前例になったらどうなるでしょう。何らかの疑惑をもたれた野党議員に対し、与党が勧告決議案を出し、過半数でよいのであれば、決議は採択されてしまいます。うるさい野党議員を、一人づつねらい打ちするようなことになりかねません。例えば、疑惑で民主党を離党したK氏や社民党のTさんの議員辞職勧告決議案が提出されたら、これは可決してしまいます。

いや、これは辞めたらどうですか、ということだから、過半数でよいのだ、別に辞めなくてもよいのだという意見がありますが、参議院の友部議員の時のように、勧告したけど無視された、というような軽いものではないはずです。そんなものを連発すれば、これまでの、そして、これからの衆議院の各種の決議というもの全てが、軽くみられることになります。

お前、それはおおげさだよ。こんな極悪非道な奴を、議員のままにしておくのは許されないよ、とおっしゃりたいのはよくわかります。民主主義の危機だなんて、針小棒大な、と言われるかもしれません。しかし、日本の国会は、すでに、ゆがめられています。
そのよい例が、議長の権威です。すでに議長職は、自民党議員の人事ローテーションの中に組み込まれ、形骸化しつつありませんか。参議院の選挙制度改革の審議のなかで、自民党の参議院執行部の意に反した議長が、辞めざるを得なくなったのは記憶に新しいところです。本来ならば、議長裁定は、極めて重いはずです。それが、あっさりと無視されてしまった、そして、与党の意のままにならない議長の首が飛んだ。私は、これは非常に大変なことだと思っています。
国会運営のルールが時に無視される、ということが現実に起こったのです。
昔の議長は、例えば少数の野党に七、与党に三というスタンスで、与党が横暴なことをやろうとしたら、議長が本会議のベルを押さないで、止めた、ということもありました。

たかが一つの議員辞職勧告決議案だから、ほんとうにひどい奴だから、こうでもしなければ怒りがおさまらない、...。お気持ちはよくわかりますが、こうしたことも考えてみてください。

今、小泉首相がリーダーシップを発揮しなければならないことは、決議案を本会議で議論しろ、ということではなく、北海道のこの小選挙区で、きちんと北村直人代議士を自民党の公認候補として、正式に発表し、地域の自民党員のみなさんに北村代議士への確固たる支持を訴えること、万が一にも世間に誤解されることがないように、野中代議士等を現地に派遣し、はっきりと自民党の候補者が誰であるのか、間違いのないようにすることだと思います。自民党の執行部がこれをきちんとやるかどうか、しっかりと見守らなければなりませんし、いざとなったら、我々がきちんと行動しなければならないと思っています。

野党にしてみれば、この決議案を材料に、与党がいかにも身内をかばうような行動に出ているのを見て、批判するのは簡単だと思います(そして、与党の中には、本当にかばおうとしている人もいるでしょう)。ただ、議員辞職勧告を弄ぶのは、野党にとって危険だと思います。
マスコミもこうしたことをきちんと説明し、自民党が実質的な行動(北村代議士の公認を正式に発表する)をとっているかどうかをきちんと見極め、もしそれがなければ、その点についてしっかりと批判すべきだと思います。

以上、私の意見です。あなたはどう思いますか?



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