2002年7月30日号

2002.07.30

住基ネット その一

住民基本台帳ネットワーク(以下住基ネット)に関する議論がマスコミをにぎわしています。
IT社会において、プライバシーの保護ということは、大変大事なことですから、住基ネットの問題がきっかけになって、多くの方々がプライバシーと行政について考え始めるのは、良いことだと思います。
しかしながら、住基ネットに関する議論の中には、誤解に基づいた意見も見られます。

住基ネットに関して、もっとも議論になっている点は、個人情報保護法との関わりです。
個人情報保護法が成立していないと、住基ネット上の個人情報が保護されない、と思っていらっしゃる方がいるようですが、これは、誤解です。
住基ネットの根拠となる改正住民基本台帳法(改正住基法)は、住民基本台帳および住基ネットに載っている個人情報に関しては、個人情報保護法の特別法の役割を果たします。この意味は、住民基本台帳および住基ネットに関する限り、個人情報を保護するという意味で、改正住基法は、全てを網羅しています。わかりやすく言うと、住基ネットに関する限り、改正住基法があれば、個人情報は法律的に保護されています。
例えば一つ、例を挙げて説明すると、国家公務員法と地方公務員法では、個人情報の漏洩に関し、「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金」を定めています。改正住基法は、ここをさらに強化して、公務員ならびに委託を受けた民間業者が住民基本台帳に関する個人情報を漏洩した場合、「二年以下の懲役又は百万円以下の罰金」を科しています。
一方、個人情報保護法は、個人情報取り扱い事業者が対象になり、六ヶ月以下の懲役または三十万円以下の罰金を科すことになっています。しかも、改正住基法では、違反した公務員が待ったなしで罰を受けるのに対し、個人情報保護法では、まず主務大臣が報告を徴収し、事業者に勧告し、それでも直らなければ命令し、それも聞かなければ罰則というステップを踏んだ処罰になります。
もう一つ例を挙げると、国会に提出されている行政機関個人情報保護法では、個人情報の目的外利用イコール守秘義務違反ということになっていません。しかし、住基ネットの根拠法になる改正住基法では、住基ネット上の個人情報を目的外利用することイコール守秘義務違反となり、罰則がかかります。
この他にも、情報の目的外利用の禁止や民間による住基コードの使用禁止など、住基コード上の個人情報の保護に関する制度は、全て改正住基法の中に規定されています。
ですから、個人情報保護法が成立していない状態と成立した状態で、住基ネット上の個人情報の保護に何か差があるかといわれれば、ありません。

では、なぜ、個人情報保護法と住基ネットのかかわりが問題になっているのかといえば、小渕総理が、改正住基法の審議のなかで、IT社会における漠然とした不安に対処するために個人情報を保護する法整備が必要だ、と答弁されているからです。
住基ネットの施行に反対する立場からは、小渕総理の答弁は個人情報保護法が住基ネットの施行の前提であることを意味している、という主張がありますし、施行に賛成する側からは、総理率いる内閣は、小渕総理の言うとおりに個人情報保護法案を取りまとめ、国会に提出している、しかし、法案を成立させるかどうかは内閣ではなく国会が決めることであって、内閣としてはできる限りの義務を果たしている、さらに、住基ネットの施行開始に当たって、何ら住基ネット上の個人情報の保護に差はない、という主張になります。
また、改正住基法では、平成十四年八月五日までに住基ネットを施行することになっていますから、もし、個人情報保護法が成立するまで住基ネットの施行を延期するのであれば、法律改正が必要です。

ですから個人情報保護法の成立と住基ネットの施行を議論するに当たり、論点は、この小渕総理の答弁の解釈をどうするか、であり、住基ネット上の個人情報保護、が論点になっているのではありません。



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