2000年11月18日号

2000.11.18

金曜日に、フロン回収に関する参考人招致があり、通産省が音頭をとって業界紙や業界を使ってフロン法案をつぶしにかかっている様子があぶりだされてきましたが、月曜日夜に、不信任案が提出されるため、一時休戦。

さて、不信任案ですが、私は反対するつもりでいます。
たしかに森首相の支持率の低さは著しいものがありますが、内閣不信任案は、政府のあり方に対し、賛否を問うものであり、野党が提出する不信任案によって、自らの党の総裁の首をすげ替えるというのは無理があると思います。参議院の選挙制度改革で、議長の裁定をないがしろにしたばかりではなく、議長の首まで取ってしまったことによる院と議長の権威の低下は、あとあとまで悪影響を及ぼします。同様に不信任案をもてあそぶことは、今後の国会運営のルールに大きく影響を及ぼすことになりますから、気をつけなければなりません。

与党から不信任案に賛成できるケースは、二つあると思います。一つは、政権の枠組みを変える場合。
かつての西ドイツで、FDPがSPDとの連立を解消し、CDU/CSUとの連立に乗り換えるため、CDU/CSU提出の不信任案に賛成した経緯があります。たとえば仮に、公明党か保守党が、自民党との連立を解消し、民主党他との連立に乗り換えるために不信任に賛成するというようなケース。
もう一つは、政党としての活動を一緒にやっていく上できわめて重要な政策に関し、党内の意見が一致しない場合。かつて小沢羽田派が選挙制度改革の問題で、意見の一致を見ず、不信任案に賛成し、新党を結成した例があります。
これ以外は、単なる権力闘争であると思います。
今回は、加藤さんも離党するわけではないと明言していますし、森首相の人気がないことに言及しても、具体的に森内閣のどの政策に反対であるのか、発言がありません。
離党もなく、具体的な政策への言及もなく、ただ、森総理の首をすげ替えるために野党提出の内閣不信任案に賛成するというのは、国会のルール軽視であるとおもいますし、これが将来、悪例となるとをおそれます。
森首相の支持率低下が自民党にとって大問題であることは事実です。参議院選挙を考えると、総裁交代も選択肢かもしれません。ならば、まず、党内で、そうした問題提起をするべきだと思います。
総選挙後にすぐ森総理続投を容認する発言を加藤さんはされていますし、その後も代議士会で、あるいは総務会その他の場で、加藤さんから首相交代論が出たことは一度もありませんし、この問題を議論するための両院議員総会の開会要求もありません。

党のリーダーの交代を党内で議論することなく、離党する意志もないのに野党の力を借りて果たすということが認められれば、今後の自民党のリーダーの地位はきわめて不安定なものになり、一時的に支持率が低下するかもしれない国民にとっての苦い薬的な政策を打ち出すことはできなくなります。
自民党支持者でない方から見れば、そんなことはどうでもいいことかもしれません。しかし、政党組織を維持していく立場からすると、党内で果たせないことを野党の力を借りて、というのは容認できません。(自民党という組織が腐っているから、そんなものぶちこわしてしまえ、という議論はたしかにあります。
でも、今回の加藤さんの議論はそうではありません)

森内閣の重要な政策に関して、意見が違う、だから不信任案に賛成するというのであれば、具体的にどの政策、どの法案あるいは予算案に関して、どう意見が違うのかということを具体的に発言する必要があると思います。自民党は、部会、政調会、総務会の各レベルでの議論がありますが、加藤さんが、なにかの議論で猛烈に反対論をぶったことはありません。
私は、原発立地促進法や高レベル放射性廃棄物の地層処分に関する法案で、桜井新 前代議士からおまえなんか離党しろ、とか、他の先輩からそんなことをやると君の人格を疑われるぞといわれながらも絶対反対を言い続けてきました。だから本会議で私がこの法案に反対しても、少なくとも党内手続きは踏んでいます。
もし加藤さんが、森内閣の財政政策を批判するのであれば、まず、党内議論の時に、論陣を張り、自民党の議員に同調を促すべきです。そして、補正予算、あるいは来年度予算案あるいはその他の関連する重要法案の採決で、きちんと政策議論をして、その政策に対する同調者を募るべきです。(全く脇道にそれますが、加藤さんが財政改革をいうならば、原発立地促進法には反対すべきです。すみません、よけいなことでした)

今回の騒動の引き金を引いたのは、加藤さんの酒席での一言でした。議論に議論を重ね、党内を説得し、それで行動を起こしたわけではありません。加藤さんと行動を共にする議員の中には、加藤さんの派閥の一員であるから、やむにやまれずという議員もいます。結局、加藤派という派閥の論理で動かざるを得ない状況なのです。
今の自民党を蝕んでいる派閥と年功序列のというものを崩すことができず、こうした事態を招いていることに関しては、我々若手の力の無さに問題と責任があります。変わるつもりのない、変わらない人たちを代えてしまえなかった明日を創る会はじめ、自民党若手のあり方が問われることになります。そのことに関しては、賛成、反対どちら側にいても、深刻に考える必要があります。

森首相の総理の資質に疑問を感じ、交代論を主張するみなさまからみれば、不信任案で首相交代ができればよいではないか、とおっしゃるかもしれません。ごく短期的にはそれでよいかもしれませんが、憲政のルールの崩壊という点で、中長期的には国会運営に大きなダメージを残すことになると私は主張します。ただでさえもイレギュラーな議会運営が行われている国会で、内閣不信任案まで、単に数あわせになってしまうのは危険だと思います。
ニュースステーションの数の積み木のようなことで、国会が動いていくことになってはいけないと思います。

自民党の立場でいえば自民党を本当に近代政党にしていくためには、総裁を代えるだけでなく、仕組み全体を変えていく必要があります。政調会を廃止し(少なくとも与党でいるときは)、派閥、年功序列でのポストの割り振りをやめる、国会での議論がきっちりとできるようなルール重視の国会運営をする、そして、候補者選定の予備選挙と地方組織の活性化、ここまでを一つのパッケージとして、提案し、取り組んでいくことが必要だと思います。
アタマだけを代えるのではなく、党の体質を変える改革を実行していかなければ、自民党が良くなることもありません。森政権が、小泉、河野(洋)、加藤のいずれになっても、アタマ以外が変わらなければ、今と同じです。

長くなりました。みなさまからのご意見をお待ちしています。もうしわけありませんが、匿名でのご意見はおやめください。お名前とご住所をはっきりとお書きいただいて、お寄せください。
ここ一週間、メールに返事が追いつきません。お詫び申し上げるとともに、お許しをいただきたいと思います。



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