鮎団

2021.08.14

私がアメリカに留学した時、大学の授業についていけるほど英語が上手にできなかったので、まずコネチカット州のプレップスクール(全寮制の私立高校)に編入しました。

平日の昼食と夕食は、男子生徒はネクタイにジャケット着用で、10人掛けのテーブルに教師1人と生徒9人が座り、そのうちの生徒の1人が「ウェイター」をする決まりでした。

私がその高校に入って初めての昼食の時、食事の終わりの方になると、私のテーブルに座っていた女子生徒の1人がすっと立ち上がって、私の方に歩いてくると、私の耳元でささやきました。

「あゆだん」

「へぇっ?」???

すると彼女はもう一度

「あゆだん」

鮎団?

私がフリーズしているのに気がついた彼女は今度は

「あーゆーふぃにぃっしゅと?」

フィニッシュ!

「あー、イエス、ふぃにっしゅ、ふぃにっしゅ」

彼女はにっこり笑うと私の前から皿を下げていきました。

そして私の隣に座っている生徒に

「Are you done?」

いきなり自分に話しかけられると何を言われているかわからなくても、となりの芝生、じゃなかった、となりの会話は聞き取りやすいのは今も昔もかわりません。

しかし「Are you done?」ってなんだ。

そんなの習ってないぞ。

「Did you finish your lunch?」とか「Have you finished your lunch?」じゃないのか。

これはニューイングランド訛りなのか。

その晩、アメリカの英語は文法が変だ、と友人に絵はがきを書いたのを覚えています。 

あれからいくとせが過ぎたでしょう。

気がつけば自分もフツーに「Are you done?」。

ところが最近、「Are you finished?」「Are you done?」はどうにも納得がいかないと書いた本がありました。

おー。

あの昼食が脳裏に浮かびました。

この本によると、「Are you finished?」「Are you done?」という言い方は、アイルランド英語由来だそうです。

アイルランドで話されるゲール語には、「have+過去分詞」という英語の現在完了にあたる言葉がなく、英語のbe動詞にあたる言葉を使うのだそうです。

そのためアイルランド英語では、「be+自動詞の過去分詞」で「完了」を表すようになりました。

さらに、イギリスでも18世紀初頭まで「完了」の意味で「be+過去分詞」という言い方が広く使われていたのだそうです。

そして19世紀のジャガイモ飢饉によるアイルランドからの移民がアメリカにアイルランド英語を持ち込み、彼らを通じてアイルランド英語がアメリカ英語に広がっていったのだそうです。

それが20世紀になってコネチカットの田舎町で、私の耳元に届いたわけです。

疑問が一つ解決したような気がしますが。

やっぱり言葉は習うより慣れろなんでしょうか。



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