独立調査団

2020.03.15

私が外務大臣として初めて出席したG7の外相会議では、共同声明の文言を巡ってもめました。
 
徹夜に近い事務方の折衝でもまとまらず、最後は私と他の国を代表するイギリスのボリス・ジョンソン外相(当時)の差しの協議ということになりました。
 
一番の争点は、ミャンマー問題、ラカイン州のイスラム教徒の難民問題でした。
 
ジョンソン外相は、ミャンマーに国連の調査団の受け入れを求めるべきだと強硬に主張しましたが、私は、それは逆効果になるおそれが高く、日本としては別なやり方をとるべきだと考えていると説得し、G7の首脳会議までを期限として、日本のやり方でやってみようということになりました。
 
ミャンマー国民の多数を占める仏教徒の多くは、「国連」は常にイスラム教徒の側に立つ組織であるととらえています。
 
その国連が調査団を送ってもミャンマー国民の多くは公平な調査が行われるとは考えず、それを受け入れればアウンサンスーチー国家最高顧問率いる政権は国民の支持を失いかねず、受け入れを拒めば国際社会からの批判を受けるのは免れません。
 
日本は、ミャンマーが自ら、調査を行い、その勧告に従うことを表明すべきだとミャンマー政府に伝えてきました。
 
日本からの勧めもあり、アウンサンスーチー政権は、独立調査団(ICOE)を組織し、調査を委ねました。
 
ICOEは、ラカイン州での証言の収集を行ったほか、国軍の幹部などからもヒアリングを行いました。
 
ラカイン州では北部の13カ所で1000人を超える地元住民から証言を集めました。
 
その結果、4カ所で治安部隊による民間人の大量殺害に関する証言を得ました。例えば、マウンドー地区トゥラトリ村では500-600人が治安部隊により殺害された可能性があることがわかりました。
 
その他、治安部隊や地元住民による放火、略奪、殴打に関する証言もありました。
 
ICOEは、2017年8月25日から9月5日までの治安作戦の間に、戦争犯罪、深刻な人権侵害及び国内法違反が発生し、これらの行為に治安部隊が関与していたと信じる妥当な根拠があると結論づけました。
 
他方、治安部隊の行動がジェノサイドの意図を持って行われたと結論づけられるような行動パターンを示すようなものはなかったとも報告しています。
 
ICOEは、ミャンマー国軍法務局に対して、指揮命令系統全体において責任を有する軍人に関して、必要な捜査及び責任追及を迅速に行うことを勧告しました。
 
また、ミャンマー政府と国軍に対して、人権、国際人道法、国際刑事法、及び交戦法規に関する軍人及び警察要員の教育、訓練を強化することを求めました。
 
ミャンマー政府は、ICOEの勧告に同意し、国軍も軍規定に沿って措置を講じることに同意しました。
 
日本政府は、これをミャンマー自身の責任追及に向けた重要な進展であると評価し、イギリス政府も、ICOEの勧告は、重要な最初のステップであると述べました。
 
新型コロナウイルスの影響がなければ、この4月にも日本の防衛大学校の准教授をミャンマーに派遣し、ICOEが勧告する国際法規に関する教育支援を行います。
 
外務大臣で始めたことを防衛大臣で引き継いでいます。



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