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日本に原発輸出ができるか
2011.06.26
国内では再生可能エネルギーのことを盛んに発言する菅総理だが、一歩国外に出ると全く違う。
6月にボンで行われた地球温暖化対策の国際会議で、菅政権はなんと日本が途上国に建設する原発による二酸化炭素削減分を、日本の京都議定書の目標にカウントするように申し入れ、福島の事故後にそんなことをまだ言うのかと、国際社会の大ヒンシュクをかった。
日本政府のあまりのひどさに、各国の環境保護団体から、交渉に後ろ向きな発言をした国を対象とする「化石賞」が贈られた。
菅政権は、原発輸出に力を入れているようだが、果たして日本は原発輸出ができるのだろうか。
専門家の意見はNOだ。
というのも、日本国内で原発を建設する時に、プロジェクトの様々なリスクを管理するのは電力会社だ。雨が降ったり、風が吹いたりしてプロジェクトが遅れた時に、電力会社がそのリスクを全部かぶる。原子炉メーカーは、言われたとおりの作業をするだけだ。
もちろん電力会社は、プロジェクトの様々なリスクを全て、総括原価の中に入れて消費者に転嫁している。なんのことはない消費者がプロジェクトのリスクを背負っている。
国内でプロジェクトのリスクをとらない原子炉メーカーが、海外でもその調子でやれるだろうか。
海外の原子炉プロジェクトは、ターンキー、つまりスイッチを入れれば動くようになった状態で引き渡す契約だったり、あるいはオペレーションまでやる契約だったりする。
つまり、プロジェクトに関するリスクをとらなければならない。
原子力発電所のプロジェクトは極めてリスキーだ。例えば、フランスのアレバは、ジーメンスと組んでフィンランドの原発プロジェクトを落札した。当初のコストはなんと5倍近くにふくれあがり、ジーメンスは離脱。アレバはキャッシュフローを確保するために、儲け頭の送電網を売却する羽目になった。
このプロジェクトは、2005年に始まり2010年に完成する予定が、2010年になって2014年に引き渡し、今年になって2015年に引き渡しと工期が遅れ、アレバの赤字がさらに膨らんでいる。
韓国が落札したアブダビのプロジェクトも極めて難しくなっているようだ。元々赤字覚悟の落札と言われたが、赤字幅が相当に拡大しているようだ。例えば、原子炉まわりの溶接ができる人材は世界的にも限られていてその確保ができなかったり、世界各国からの労働者に指示するためにかなりの数の通訳が必要になったり、安全基準が変わったり...。
アメリカのサウステキサスの原発プロジェクトも2基で52億ドルという構想が、実際に詰めていくと180億ドルになり、投資家も撤退。そこに飛びついたのが東芝と東京電力。このプロジェクトは最後はいくらになるか読めないとまで言われたが、311で向こうから契約が破棄された。たぶん、日本側は救われたのだろう。
ベトナムの原発プロジェクトも、他のプロジェクト同様に、プロジェクトの運営がうまくできない可能性が極めて大きいと言われている。政府保証などでこのリスクが日本国民に転嫁されることがあってはならない。
いい加減に菅内閣は、海外の原発ビジネスから撤退を宣言するべきだ。