シリアと汚染水

2013.08.31

イギリス下院が、キャメロン政府が提案したシリアへの軍事行動を容認する決議案を反対285、賛成272で否決した。
この決議が否決されたことにより、決議案を提出したキャメロン首相が「議会に従う」と明言し、イギリスの軍事介入はなくなった。
すばらしい。
いやいや、シリアへの軍事行動を否定したことをほめているのではない。
イギリス下院は、定数650のうち、与党が364議席と与党が多数を占めている。その状況の中で、政府が提案した決議が否決されるということをほめているのだ。
議院内閣制のもっとも基本的なルールは、「内閣(政府)は連帯して責任を負う」ということであり、つまりそれは「与党は内閣と連帯して責任を負わない」ということだ。
今回の決議案には、閣僚からジュニアミニスターまで、日本でいう政務三役に当たる役職についている下院議員はすべて賛成したはずだ。
政府の一員でありながら、政府の方針に反対することはできないから、もしこの決議案に反対するならば、採決前に政府の役職の辞表を提出しなければならない。
しかし、与党議員といえども、政府の一員でなければ、政府提出の決議が正しいかどうか判断し、それが間違っていると思うならば反対する。
法案や決議を提出した政府のまずやるべき仕事は、与党議員に対して、その法案や決議がいかに正しいかを説明し、説得することである。
もちろんイギリスの与党議員にも何らかの縛りはある。
まず、政府の方針にしばしば反対していれば、特に重要な採決で反対票を投じれば、次の内閣改造でも政府の一員には選ばれないだろう。政府の一員になれなければ、政府の政策には関与できない。
政府の支持率が高い時、特に地元の与党の党員が政府を支持しているときに、政府に反対していれば、次の選挙の時に選挙区支部は別な者を公認候補として擁立するかもしれない。
あまりに頻繁に多数の与党議員が造反するような政権は、国民からの支持を失い、次の選挙で敗北し、野党になってしまうかもしれない。
そうしたことを考えながら、議会での採決で賛否を投じるのが、議員の在り方だ。
残念ながら、日本の国会の場合、本会議の採決はすべて党議拘束がかかり、震災直後の国会の会期延長の動議のようなものであっても党議に反すると、役職停止1年というような、議会制民主主義を理解していないようなことが行われる。
だから国民の思いを国会が形にすることができず、政治に対する期待もなく、不信感だけが強まっている。
しかも国会が機能していないのは、採決という出口だけではない。
国会法によれば、衆議院では20人の賛同する議員がいれば、代議士は誰でも法案を提出することができるようになっている。(予算を伴う場合は50人の賛同者)
それならば、福島第一原発の汚染水処理の責任を国に持たせる法案を議員立法で提出すればよいではないかと思う国民も多いはずだ。
しかし、現実にはそれができない。なぜか。
各党の執行部の同意がない法案については、20人の賛同者がいても、衆議院の事務局が受け取らないからだ。
これは戦後まもなく始まった慣例だ。各党からその旨の手紙が衆議院事務局あてに出され、それに従って事務局は党の執行部の同意がないものは受け取らない。
自民党の場合、幹事長・総務会長・政調会長・国対委員長のサインが必要で、そのためには部会・政調会・総務会での審査を経て了解をもらわなければならない。
この党内の了解は、建前では多数決ではなく、満場一致となっているため、少数の一部が反対と声を挙げれば、了解されない。
だから多くの国民が、東電を破たん処理するべし、汚染水処理を国が前面に出てやるべし、と思っていても、それを実現する法案が国会に提出されない。
もし仮に、そんな法案が野党から議員提案で出されても、そくざに与党は反対の党議拘束をかけて、造反には断固たる処分をすると脅して否決するだろう。
だから、国民の思いが政治に受け止められていないという不信感が強まっていくのだ。
現在の仕組は、政府と与党執行部には大変都合がよい。だからなかなか変わらない。政権交代しても、そこは同じことだった。
国会が機能するように改革できれば、国民の思いを吸い上げる政治は実現する。
閣僚を国会に縛り付けすぎている現在の国会運営を改革しようという動きがある。それならば、すべての採決に党議拘束をかけたり、議員立法を縛っているような慣例もあわせて廃止し、国民の思いを受け止められる国会にすべきだ。



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