金武町事件の裏側

2009.04.07

沖縄県の金武町で、駐車してあった車のナンバープレートに銃弾がめり込むという事件が昨年12月に起きた。

銃弾はM33ボール弾というM2マシンガンなどで使われる銃弾だった。
金武町は、米軍の実弾射撃演習場に隣接していて、過去、演習場からそれた銃弾による事件が何件も起きている。今回の事件も、米軍の演習場からの流弾が疑われている。

当然、日本側から米側に情報照会をかけ、捜査をするのであるが、問題が起きている。

表面上は、日本側の問い合わせに対し、米側が答えない。この状況が衆議院の外務委員会でも取り上げられ、米側の対応が不誠実ではないかと問題提起された。外務委員会としても、米側に、この問題についての対応を文書で要請しようと準備を始めたが、実は、米側だけの問題ではないということもわかってきた。

まず、日本側から米側に対しての照会は、この事件を所轄する警察署長名で米軍の憲兵司令官に対して行われている。その際、この情報照会も『捜査』であるとして、沖縄に駐在する外務省の大使は、情報の輪に入れられていない。なぜ沖縄の外務省大使に写しも出ないのかと尋ねると、沖縄県警の答えは、「捜査だから」。

日本側が県警の中だけの対応なので、アメリカ側がどのレベルでこの情報照会に対応しているか、外務省ルートでもわからない。
こうした事件が近隣住民にとってどれだけ深刻であるか、そしてそれがひいては日米同盟にどれだけ深刻な影響を与えるかということがわかっているレベルでアメリカ側が対応しているのか、たんなる文書照会への対応にすぎないと思っているのかわからない。
(日本側もそこまで考えているならば、もう少し、情報をいろいろなところと共有しただろうと思うが)。

所轄の署長が情報を照会し、それに対する回答が来ない中で、その後、米側に対して、どのレベルで回答を要求したのかと尋ねると、沖縄県警の答えは「それは捜査情報だから言えない」。
文書照会を昨年12月から3月末までに三回したのはわかっているが、その間に、おい、あれどうなっていると米側にフォローをどのレベルの誰がしてきたのか、いや、フォローしてきたのかもわからない。
米軍側で単に文書が紛れてしまっていただけかもしれないのだ。

今回の事件が起きたのは12月10日である。それは警察庁や金武町、メディアもみんな知っているし、そう公表している。
が、沖縄県警の資料には事件が起きた日は出ていない。「捜査だから」。

沖縄県警から米軍に対し、最初、事件が発生したのは12月11日と伝えた。
ひよっとすると、米軍は、その日は演習をしてませんとだけ答えた可能性だってある。

事実、4月1日に米軍が出した最終報告(正確には最終報告についてのメディアリリース)では、この銃弾は米軍のものであるはずはない、なぜなら、この種の銃弾を使った演習は12月の9日、10日に行われ、11日には行われていないからである、と言っているのだ。
しかし、実際に事件が起きたのは10日であり、その日、米軍はこの銃弾を使った演習を行っていた。(米軍は、弾道学のエキスパートによる検討の結果、たとえ演習が行われていたとしても、その場所から金武町の現場に弾が飛び出す可能性はきわめて低いともしている。)

だから、米軍から答えが返ってこないといっても、米側だけの問題なのか、それともこちら側にも問題があるのかわからない。
そして、この遅延が、地元に、日米同盟に、どんな影響を及ぼすのかということをきちんと考える人が両側にいれば、こんな事態になることはなかったはずだ。

実は、沖縄県警は、セスナ機の墜落事故の時も重要情報を入手できていない。墜落した飛行機のフライトプランを『日本の』国土交通省から入手できなかったのだ。そのときは、情報を入手する活動そのものが『捜査』だとは知らなかったから、外務委員長が国土交通省に電話して、フライトプランを沖縄県警に出すように要請した。なぜかそのときは、沖縄県警からは『捜査』の邪魔だと叱られることはなかった。

ということで、米側に対し、アクションを取る前に、日本側の仕切りが必要だと判断する。

警察庁と外務省を呼んで、米軍がらみの事件が起きたときは、政府全体で対応する必要があるのではないかと問題提起し、少なくとも沖縄で米軍関連の事件が起きたときは、警察は、外務省の沖縄大使と県、それに当該市町村と情報(「捜査情報」の中身は別として)を共有するべきではないかとルール作りを要請する。

事件を解決するために、日本側の役所のメンツと縦割り行政は排除しておく必要がある。



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