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社会保障改革2025-8 外国人の医療費
2025.02.16
日本に滞在三か月以上の中長期在留外国人は、健保や協会けんぽに加入していなければ、国民健康保険に加入します。
国民健康保険に加入している外国人は、92万人、被保険者の3.6%ですが、外国人の医療費は合計で1250億円と全体の1.4%弱、国民健康保険に加入している日本人の平均年齢に比べて国民健康保険に加入している外国人の平均年齢が低いこと等を考えると、国民健康保険の財政にプラスかもしれません。
今後、在留カードとマイナンバーカードの一体化と在留外国人にマイナンバーカード保険証を義務づけることで、外国人のなりすましによる保険の悪用を防ぐことかできます。
また、病気であることがわかった上で来日し、中長期滞在しながら国民保険に加入して治療を受けることを防ぐことが必要です。
短期滞在の外国人は国民健康保険等には加入できないので、保険財政には影響はありませんが、未収になった医療機関に影響が出ます。
そのため、短期滞在で入国する外国人には民間の医療保険への加入を義務づけが検討されています。
しかし、「外国人による健康保険の利用をやめれば我が国の医療費問題は解決する」というわけではありません。
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我が国の医療費をいかに削減するかという問題提起に対して、外国人による健康保険の利用をやめれば医療費問題は解決するんだという意見が複数ありました。
実際のところどうなのでしょうか。
日本国内に住所を有する者は、日本人、外国人を問わず国民健康保険の被保険者となります。
ただし、健保組合など他の医療保険に加入している者、生活保護受給者、短期在留外国人、滞在三か月を超える外国人のうち、外国人富裕層を対象とする「外国人長期滞在制度の対象者」、医療滞在ビザで来日した「医療目的の者」などは適用除外となります。
かつては日本に一年以上滞在する外国人が国民健康保険の対象でしたが、平成の法改正で滞在三か月以上の中長期在留外国人が対象となりました。
2024年のデータをみると、国民健康保険の被保険者数は2,508万人、そのうち92万人が外国人で、割合でいうと3.6%になります。
ではその外国人はどの程度医療費を使っているのでしょうか。
2022年3月から2023年2月までの診療分の合計です。
合計 うち外国人 割合
レセプト件数 3億6655万件 586万件 1.60%
総医療費 9兆871億円 1250億円 1.38%
高額療養費該当件数 9,361,797件 95,206件 1.02%
高額療養費支給額 9,606億円 111億円 1.15%
さらにレセプト1件あたり80万円を超える高額レセプトをみると
合計 外国人 割合
件数 1,690,636件 19,000件 1.12%
総医療費 2兆4292億円 285億円 1.17%
外国人の医療費は合計で1250億円と全体の1.4%弱で、仮にこれが全てなくなったとしても医療費の改善にはほど遠いのが現実です。
外国人が被保険者数に占める割合と比べて医療費の割合が小さくなっていること、国民健康保険に加入している日本人の平均年齢に比べて国民健康保険に加入している外国人の平均年齢が低いこと、さらに国民健康保険に加入している日本人の1人あたり医療費が37万円に対して、外国人は1人あたり13万円であることから、国民健康保険財政にプラスの効果があるのかもしれません。
外国人の被扶養者は、日本国内に居住していることが条件になるため、基本的に家族として在留資格を得ることができる配偶者と子どもに限られます。
「外国人に保険医療を受けさせるな」では問題は解決しませんし、問題から目をそらすことになるだけです。
また、外国人被保険者が、資格取得から一年以内に以下の場合に該当(A)し、さらに在留資格の本来活動を行なっていない可能性があると考えられる場合(B)、市町村から地方入国管理局に通知が行きます。
(A)
国民健康保険限度額適用認定証の交付申請を行なった場合
高額療養費の支給申請を行なった場合
海外療養費の支給申請を行なった場合
出産育児一時金の支給申請を行なった場合
その他医療を受ける目的で在留していることが特に疑われる場合
(B)
地方入国管理局に提出された書類が偽造だと判明した
同一の住所に別世帯の多数の外国人が住民登録している
在留資格が「留学」であるにもかかわらず通学していない
在留資格が「技術・人文知識・国際業務」「技能」等であるにもかかわらず就労していない又は単純作業に従事している
在留資格が「管理・経営」の経営者であるにもかかわらず給与所得がある又は税申告がある
在留資格が「管理・経営」の経営者であるにもかかわらず経営するとされる会社が事業運営していない
在留資格が「家族滞在」「日本人の配偶者」等であるにもかかわらず家族と別居している
在留資格が「家族滞在」「日本人の配偶者」等である者が配偶者と離婚している
2019年から34件が対象となり、地方入国管理局は在留資格取り消し事由に該当していると判断した場合、在留資格を取り消し、市町村は国保の資格を消除し、給付費の返還を請求します。
残念ながらこうした悪用をすべて発見できているかどうかはわかりません。
今後、在留カードとマイナンバーカードの一体化と在留外国人にマイナンバーカード保険証を義務づけることで、外国人のなりすましによる保険の悪用を防ぐことかできます。
また、病気であることがわかった上で来日し、中長期滞在しながら国民健康保険に加入して治療を受けることを防ぐことが必要です。
また、医療保険の問題ではありませんが、医療機関を受診した訪日外国人の支払い実績を2023年9月1日から9月30日の一か月間、調べています。
この期間に医療渡航を除き、観光などの目的で来日した外国人のうち、医療機関を受診したのは延べ3142人で、未収金が60,072,741円ありました。
内訳は、外来が51人、1,919,643円、入院が31人、58,153,098円。
この他に、自由診療の医療を受けることを目的に訪日した外国人は1123人、未収金になったのは全て外来の延べ6人で、7,450,336円。
医療渡航の場合、癌治療などの高度医療を受けているため、1人あたりの金額は大きくなります。
短期滞在の外国人の場合、国民健康保険等には加入できないので、保険財政には影響はありませんが、未収になった医療機関に影響が出ます。
これを防ぐために、短期滞在で入国する外国人には民間の医療保険への加入を義務づけることが、現在、検討されています。
外国人の保険診療に目をそらさず、日本の医療費の問題をしっかり議論することが必要です。