おすすめの一冊「満州事変」

2024.03.03

不定期連載のおすすめの一冊、緒方貞子さんの「満州事変」を取り上げます。

「満州事変」 緒方貞子著 岩波現代文庫

UNHCRやJICAのトップを務めた緒方貞子さんが、1963年にカリフォルニア大学バークレー校に提出した博士論文が1966年になって日本語で出版されたのが本書です。

関東軍の片倉参謀の「満州事変機密政略日誌」をベースに、張作霖の爆死からなぜ国際連盟脱退に至ったのか、その間の日本政府と軍中枢部と関東軍の三者の意思決定の背景を克明に追究しようとした力作です。

政府はもとより陸軍の中枢部ですら、張学良政権後には親日的な地方政権の樹立を構想していたのに対し、関東軍は中国の主権を否定する満州国の設立に向けて突っぱしりました。

この日本政府、陸軍中枢部と関東軍の分かれ目を克明におっています。

本書の解説の中で日本政治外交史の酒井哲哉東大教授が、満州事変に関して最初に読むべき一冊であり、「満州事変の背景・展開・影響が過不足なく記述されており、どこかに偏した箇所がほとんどない」と評しています。

私も、これまで読んだ満州事変を扱った本の中で、もっとも論理的に記述され、わかりやすい本だと思います。

緒方貞子さんその人に関しては、「聞き書 緒方貞子回顧録」「私の仕事 国連難民高等弁務官の10年と平和の構築」「紛争と難民 緒方貞子の回想」などがありますが、「聞き書 緒方貞子回顧録」が読みやすく、おすすめです。



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