これも日本の国際化を邪魔している

2013.08.23

日本法令外国語訳データベースシステム(JLT)と呼ばれるシステムがある。
日本の法律を英訳したものが掲載されているシステムだ。
英訳された日本の法律のうち、ニーズが高いもの(JLTでダウンロードされた数の多いもの)を順番に並べると
会社法(第1編-第4編)
労働安全衛生法
民法(第1編-第3編)
特許法
金融商品取引法
食品衛生法
会社法(第5編-第8編)
刑法
輸出貿易管理令
民事訴訟法
となる。
しかし、7863の現行法令のうち英訳されたものは378、わずか4%しかない。
韓国では、現在、約4000の法律に対して、法制処と法制研究院が合わせて約2300の英訳を公開している。
しかも日本の法律の英訳は必ずしも品質がよくないという。たとえば、これまでの法律の英訳を検索してみると、「この法律は公布の日から施行する」という文の英訳だけでも30種類もあるという。
このように翻訳がバラバラになってしまうのは、標準的な訳語を定めた辞書が不十分だからだ。
JLTの標準対訳辞書には、わずか3594語しか収録されていない。それに対して「法令用語韓英辞書2009年版」には9306語が収録されている。
しかもJLTに掲載された過去の翻訳が、機械的な翻訳の訳文データとして利用できる形で提供されていない。
法令の英訳が公開されるまでに時間がかかりすぎるのはもちろん、各省庁がそれぞれの所管する法令を翻訳するため、翻訳の品質はばらばらで、しかも翻訳の品質がチェックされてもそれを次の翻訳に役立てるために翻訳者にフィードバックされることもない。
さらに驚いたことに、しばしば「日本語の原文に誤りがある」という!
英訳するための正確な日本語の原文が入手困難だというのだ。
そんな馬鹿なと一瞬思ったが、よく考えればそういうことも充分ありうる。
たとえば手近にあった『現下の厳しい雇用情勢に対応して労働者の生活及び雇用の安定を図るための雇用保険法及び特別会計に関する法律の一部を改正する法律案』の条文を見ると次のようだ。
『第一条
雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)の一部を次のように改正する。
附則第四条、第五条第一項及び第十条中「平成二十四年三月三十一日」を「平成二十六年三月三十一日」に改める。
第二条
特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)の一部を次のように改正する。
附則第二十条の三第一項及び第二項中「及び平成二十三年度」を「から平成二十五年度まで」に改める。』
法律の改正案の条文は、改正後の条文が書かれているのではなく、どこをどう改正するということだけが条文になっている。この改正案が成立すると、その改正案を元の法律の条文に入れ込まなければならない。それにしばしば誤りがあるというのだ。
もちろん法律案新旧対照条文というものが法案にはついているのだが、それでも改正された後の法律の条文が間違っていることがあるという。
ちなみに、法案が閣議決定されると各省庁は「提出法案一覧」という法案のデータベースに掲載し、国会審議が始まると衆議院は「議案の一覧」「制定法律」、参議院は「議案情報」というデータベースに載せ、法律が公布されると印刷局の「官報DB」、総務省の「法令データ提供システム」、政省令は各省庁の「所管法令一覧」、そして英訳されると「日本法令外国語訳DB」に載る。そして、この全てがお互いに連携していない!
うー、頭が痛い。
ちなみにこの英訳された日本の法令、1日あたり9万ページビューと500ダウンロードの利用実績がある。
しかも、この日本法令用文書型定義は標準化すらされておらず、JLTの維持管理は予算の制約で、ボランティアに近い状況でモニタリングされている。
日本の国際化のための重要なインフラが、結構脆弱だ。



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