ACTAについて

2012.09.11

Anti-Counterfeiting Trade Agreement、偽造品の取引の防止に関する協定、が通常国会で承認されました。俗にACTAとよばれる協定です。

ACTAは、偽造品など知的財産権を侵害している物品の国際的な拡散防止のために、知的財産権侵害を防ぐ法的な枠組みが緩い国に対して、法的な規制強化を求める枠組み協定です。

本来、知的財産権の保護に関しては、WTOで対応すべきですが、現在のWTOでは、知財権の保護の強化を先進国が求めると他の国々がその見返りに市場アクセスを求めるなど、南北対立が激しく、交渉がうまくいかないという考えがありました。

そのため、2005年のG8のグレンイーグルズサミットで、日本の小泉首相が知財権を侵害している物品の拡散防止のための法的枠組み協定を提唱し、WTOではなく有志の国々で先行することにしてみました。

日本、アメリカ、EU、オーストラリア、カナダ、韓国、ニュージーランド、シンガポール、モロッコ、メキシコ、スイスの11の国と地域で交渉がまとまり、そのうちの8カ国により2011年8月1日に日本で署名式がおこなわれました。

ACTAは、知財権保護の緩い国々に対して、法的規制を強めることを求める協定なので、先進国の国内法制がこの協定で影響を受けることはあまりありません。

ACTA加盟により、改正が必要になるアメリカやEUの域内法はないと聞いています。

日本では、ACTAによる影響を受けるのは、著作権法の一部だけです。

ACTAは、違法なコピーを防ぐための暗号を解除することを禁止し、暗号解読ソフトウェア等の製造・輸入・販売を禁止することを求めています。

これまで日本の著作権法は、著作権を守るために鍵をかけてあるデジタル製品の鍵を壊すことを禁止していました。ACTAにより、デジタル製品そのものを暗号化することによって著作権を守ろうとしている製品の、その暗号を解読することも禁止することが求められ、今年6月20日にこの著作権法の改正が成立しています。

この法改正以外に、ACTAによって日本の国内法が変わることはありません。

さて、ACTAの主な内容を見ると、たとえばACTAは偽造商標ラベルの輸入・製造・頒布を禁止します。

国によっては、偽の商標をつけた商品の輸入・製造・販売を禁止しても、偽造商標ラベルの製造や輸入を規制していないことがあります。

例えば商標の付いていないテレビを買ってきて、それにソニーの偽造商標ラベルを貼って販売することを防ごうとしても、そうした国では、偽造ラベルの輸入や製造だけでは取り締まりの対象になりません。

ACTAに加盟すると偽造ラベルだけでも取り締まりの対象にしなければなりません。もちろん日本はこれまでに偽造ラベルも取り締まりの対象にしています。

ACTAは、輸入される偽造品だけでなく輸出される偽造品を通関停止することも義務化し、権利者の申し立てがなくとも税関が偽造品とわかれば通関停止にすることを求めています。

さらにACTAは知財権を侵害した物品が廃棄されることを義務化し、個人だけでなく法人の責任を追及することを求め、幇助・教唆も罪にすることを求めています。

しかし、こうしたことは、日本・アメリカ・EUではいずれも既に法規制の対象になっていることばかりです。

話がややこしくなったのは2012年1月、アメリカ議会にインターネットに関する新たな規制法案が提出されてからです。

SOPAとPIPAという略称で知られるこの法案は、インターネットに対する規制をかなり厳しくする内容が含まれていたため、業界や利用者の反発が強く、提出後、すぐに棚上げされ、事実上の廃案になりました。

この一件の後、ACTAに関しても、インターネットの規制が含まれるのではないかという懸念が交渉中に広がりましたが、条文が公開されて、その懸念は一時、収まりました。

しかし、東欧を中心に、ACTAに加盟するとインターネットが使いにくくなるという噂が広まり、著作権を緩くしたいというグループも加わってEU議会で反対のロビイングが強まりました。

欧州委員会は欧州司法裁判所に、この協定が市民の基本的権利に抵触しないことを確認することを求めましたが、EU議会はその判断が出る前に採決し、ACTAの承認を否決しました。

ACTAにより強化された知的財産権の保護が広まることは日本の産業にとってもよいことであり、日本政府は、東アジア各国や東南アジア各国にACTAへの参加を引き続き呼びかけていくとしています。

Q ACTAによって、インターネットの利用が制限されるのではありませんか。現に今年の通常国会で、著作権法が改正され、著作物の私的利用が制限されるようになりました。

A インターネット上に違法に置かれた著作物を、違法状態であると知りながらダウンロードした場合、これまでの著作権法では民事上の救済の対象にしかなっていませんでしたが、通常国会で著作権法を改正し、刑事罰の対象としました。しかし、これはACTAとは無関係の法改正です。

Q ACTAが通るとプロバイダが常に個人のツイートなどを監視するようになりますか。

Q フランスのスリーストライクポリシー(著作権等の侵害が行われた場合、権利者からの申し立てにより、侵害者に警告を発し、警告三回で侵害者のインターネットアカウントをクローズする)のように、違反者に対するインターネットへのアクセスの遮断が行われたりしますか。

A ACTAには、インターネットへのアクセスを遮断したりプロバイダによる監視を求めたりする条項は含まれていません。

Q ACTAに参加するとジェネリック薬の利用が制限されるのではありませんか。インドからブラジルへ送られるはずの医薬品が、ヨーロッパの港で積み替えられるときに、止められるということが起こりました。

A 指摘されたジェネリックの問題は、特許権を侵害したおそれで止められたのであり、ACTAとは無関係です。

ACTAの第13条の注記には「The Parties agree that patents and protection of undisclosed information do not fall within the scope of this Section」とあり、ACTAの求める国境措置から特許権を明示的に外しています。

Q ACTAが通ると著作権者の意思にかかわらず、政府が著作権侵害で逮捕できるようになりますか。

Q 著作権を侵害した著作物がインターネットにアップされると、著作権者の意思に関係なく、政府が削除できるようになりますか。

A 日本の法律では、著作権侵害は親告罪、つまり著作権者からの申し立てがなければ罪に問われません。(商標権は非親告罪なので権利者からの申し立てがなくとも模造品等は税関で差し止められます)

ACTAは、著作権侵害を非親告罪にすることは求めておらず、ACTAによってそうした著作権法改正をする必要はありません。

ACTAの第26条は「Each Party shall provide that, in appropriate cases, its competent authorities may act upon their own initiative to initiate investigation or legal action with respect to the criminal offences specified in paragraphs 1, 2, 3, and 4 of Article 23 (Criminal Offences) for which that Party provides criminal procedures and penalties」とあり、著作権法侵害の非親告罪化は各国の裁量の範囲とされています。

Q ACTAが著作権法侵害を非親告罪にすることは求めていなくとも、今後、著作権侵害を非親告罪にすることはできるのではないですか。

A 著作権法を改正して著作権侵害を非親告罪にすることは理屈から言えば可能ですが、そもそもその場合、ACTA加盟とは関係ありません。

Q ACTAはいつ発効するのですか。

A ACTAの発効には少なくとも6カ国または地域の批准が必要ですが、現在、そのめどはたっていません。

Q 原交渉国の批准状況は。

A 日本は、通常国会で承認しましたので、一、二ヶ月で批准されることになります。アメリカ議会では、まだ、承認手続が進んでいません。カナダは批准に必要な国内法の改正手続中です。EUは、EU議会が一度否決したので司法の判断を待ち、再上程ということになるので、あと少なくとも一、二年はかかります。

Q 原交渉国以外にACTAに加盟しようとしている国がありますか。

A 現時点で、11カ国以外にACTAへの加盟の意思を明示している国はありません。

Q 日本として、どんな国にACTAへの加盟を働きかけようとしていますか。

A 東アジアや東南アジア諸国、特にベトナム、インドネシアなどです。

Q たとえば東南アジア各国にとってACTAに加盟するメリットは何ですか。

A ACTA水準で知的財産権の保護あるいは取締りをしているという投資環境のアピールになること、知的財産権侵害及びその取締りにに関する様々な情報を共有できることなどです。

Q 中国はACTAに関してどんな対応をしていますか。

A 経産省が、中国の商務省とACTAに関する共同の勉強会を開始する予定です。



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