ACTAふたたび
2012.09.12
Q 批准されるとインターネットの利用が制限されたり、プロバイダに監視されたりするようになるACTA条約が審議されようというのに、マスコミは全く報道をしませんでした。これはどんな圧力がどこから掛かっているからなのですか。
A まず、ACTAには、インターネットの利用を制限したり、プロバイダによる監視を求めたりする条項は含まれていません。
ACTAによって、そのようなことが起こることはありません。
また、一般的に、なにかの条約を批准するから国内に規制が掛かるものではありません。
国が条約に加盟しようとするとき、批准に先立って、その条約が課している義務を果たすための国内法を整備します。その国内法によって、国内に新たな規制がかけられることになります。
例えば、核廃棄物の海洋投棄を禁止するロンドン条約に加入しようとすれば、批准に先立って、核廃棄物の海洋投棄を禁止する国内法を成立させる必要があります。
もし既に核廃棄物の海洋投棄を禁止する国内法を持っている国が加入しようとすれば、国内法の整備なしに加入することができます。
ACTAの場合、日本が批准するために必要な国内法の整備は、著作権法の一部改正だけでした。
ACTAは、違法なコピーを防ぐための暗号を解除することを禁止し、暗号解読ソフトウェア等の製造・輸入・販売を禁止することを求めています。
これまで日本の著作権法は、著作権を守るために鍵をかけてあるデジタル製品の鍵を壊すことを禁止していました。ACTAにより、デジタル製品そのものを暗号化することによって著作権を守ろうとしている製品の、その暗号を解読することも禁止することが求められ、今年6月20日にこの著作権法の改正が成立しています。
我が国が、ACTAを批准するために必要な法改正はこの他にはありません。
つまり、この法改正以外に、ACTAを批准することによって行われる規制の強化や新たな規制はありません。
ACTAが各国に求めていることは、この法改正以外は、すでに日本では国内法で担保されているものばかりです。
ACTAそのものの承認を国会が議論するということは、すでに、必要な国内法の改正は全て終わっている事を意味します。
ですから、ACTAを批准したことによって、何かの規制強化がこれから行われることはありません。
国内法の改正が一つだけ必要とされ、しかも、その法改正は一般の国民生活にはほとんど影響を及ぼすことがなく、しかもその国内法の改正ではなく、それを必要とした条約の国会審議が行われるからといって、マスコミが報道をしなくとも不思議ではありません。
べつにどこからか圧力をかけられたというものではないと思いますが。