共済年金の変な統合を許すな

2011.11.16

年金問題を議論する上で、避けて通れないものが厚生年金と共済年金の統合問題だ。

小宮山厚労大臣は11日の閣議後の記者会見でこう述べている。

「厚労相は一元化法案について『(通常国会の)冒頭は間に合わないが、通常国会中には出したい』と表明。その上で『07年に提出した法案をベースに検討している』と述べた。一元化では共済年金の独自の上乗せ給付で、『3階部分』に当たる職域加算を廃止するかなどが焦点となるが、それに関し財務省などと調整していることも明らかにした。」

おーい、大臣、あなた、だまされていますよ。2007年の法案をベースに検討をしてはいけない。

この統合の目的は本来二つあるはずだ。一つは厚生年金と比べて保険料率が低かったり、職域加算という上乗せ部分があるなどの官民格差を統合によってなくすこと、もう一つは厚生年金と比べて優遇されてきた共済年金だから持ち得た積立金を統合すること。

しかし、2007年の厚生年金と共済年金の統合法案は、不完全、不自然なものだった。自民党内の過去官僚、とくに大蔵過去官僚が中心となってどがちゃがした結果、明らかにおかしな内容の統合案になっていた。

だから2007年の法案が廃案になったのはいいことなのだ。

2007年の法案では、たしかに共済年金の保険料率は、2004年の年金改革が定めた厚生年金の料率引き上げにそって18.3%まで引き上げられて、そこで固定される。しかし、引き上げ部分は共済年金の積立金で支払うことにして、公務員の負担はそう簡単に増やさないという内容の法案になっている。

当時の役所がつくった資料だとこう表現される。
「また、共済組合等が保有する積立金について、厚生年金の積立金の水準に見合った額を仕分け1・2階部分の共通財源に供する。」
何を言っているかよくわからないが、こうした霞ヶ関文学に瞞されてはいけない。

廃止されるはずの職域加算もOB分は積立金から支払うことで温存し、厚生年金を上回る分の共済年金の積立金は使ってしまう。共済年金が厚生年金よりも優遇されてきたことによる共済年金の積立金の過剰分は共済年金で使い切ってから統合しますという内容になっている。

つまり厚生年金の積立金は5年分相当だが、共済年金の積立金は10年分相当ある。だから、統合する時には厚生年金と同じ5年分だけの積立金をもって統合するから、残りは共済年金で使い切りますということ。

つまり共済年金の積立金52兆円のうち28兆円は差し出すが、残りの24兆円は自分達で使い切るぞという法案だ。

しかし、共済年金の年齢構成が厚生年金よりもいびつになっていることから、将来必要になる積立金の割合は、厚生年金よりも高くなるという指摘がされている。

だから統合する時には共済年金の持参する積立金の割合は厚生年金よりも高くなければならないはずなのに、厚生年金と同じ5年分だけを持参して統合することにすれば、将来、厚生年金は統合した共済年金の支払い分を余計負担しなければならなくなる!

共済年金の積立金を大盤振る舞いして使い切って、統合したあとは厚生年金におんぶにだっこというのでは、なんのための統合かわからない。

この統合は、官民格差を無くすことと、賦課方式の年金制度を積立方式に抜本的に改革するために、積立金を少しでも増やすための統合であるはずだ。

今年8月26日に開催された社会保障審議会年金部会で、厚生年金と共済年金の統合は、調整が必要なため、関係省庁間で検討して年金部会に「報告する」とされている。そして年金部会の議題にこの一元化は含まれていない。

馬鹿言っちゃいけない。

年金の統合は役所が勝手に決めて来ますといっているわけだ。

共済年金の統合はこれからの年金の抜本改革に資するために決めたルールに従って、統合させますというのが筋だろう。

霞ヶ関と永田町の過去官僚の暴走を止めなければならない。

民主党にも自民党にも過去官僚がいる。彼らの跳梁跋扈を許してはならない。

当時民主党は、国民年金も合わせて一元化すべきだという全く違う理由で反対したが、今回、その法案と同じようなものを出してきてはいけない。政治がきちんと官をコントロールできるかという問題だ。



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