原子力村の飛び地

2011.07.04

原子力損害賠償紛争審査会という文科省傘下の組織がある。

今回の福島第一原発事故による損害賠償の補償の範囲の指針を策定する組織だ。

ある人から、この審査会のメンバーの中に、日本エネルギー法研究所のメンバーがいますか、という質問が来た。

日本エネルギー法研究所とは何だろうと調べてみると、財団法人電力中央研究所から研究を受託している組織のようだ。

日本エネルギー法研究所のホームページをみると、その目的に、こう書かれている。

「日本エネルギー法研究所は、エネルギーに関する国内外の法的諸問題についての調査および研究ならびに情報の収集、整理、提供等を行うことによって、エネルギーに関する法的諸問題の解明とそれらについての一般の理解を深めることを目的としています。」

ずいぶんニッチな研究所ですねと言うと、原発訴訟に直面し、危機感を抱いた電力会社が、法律家を抱えなくてはいけないとはじめた組織だそうだ。

確かに電中研は、電力各社の研究所だ。

日本エネルギー法研究所の年報を見ると、研究所の研究部の名簿が出ている。研究部長以外の研究員九名は、北海道から九州までの九電力から一人ずつ出ている。

総勢三人いる事務部の事務部長、事務課長はそれぞれ東京電力。

原子力損害法制検討班は、大学教授が名を連ねる主査、研究委員の下にオブザーバーがいるが、電事連原子力部副部長が名を連ね、その下の研究員は、九電力からの九人。

環境法制班は、やはり主査、研究委員の下にオブザーバーが二人いて、電事連立地環境部副部長と東電環境部環境企画部グループマネジャー、そして研究員は九電力からの九名。

エネルギー事業班(規制・競争検討)は主査、研究委員の下にオブザーバーが四人、電中研社会経済研究所上席研究員、電中研社会経済研究所主任研究員、電事連企画部副部長が二人、九電力から九名の研究員。

原子力行政に係わる法的問題研究班は、主査、研究委員の下にオブザーバーで電事連原子力部副部長、九電力から九名の研究員。

たしかに電力会社が丸抱えしている感のある研究所だ。

電力会社が起こした事故の損害賠償の範囲を決める審査会のメンバーに、電力会社丸抱えの研究所と関係ある学者が入っていますか、という質問は、メンバー選定にあたって文科省が当然、考慮すべきことだろう。

事故後に原子力村の学者がメディアでどんな発言をしたか、みんな聞いている。

原子力損害の範囲の判定や紛争に関する和解の仲介をやる審査会の中立性が疑われるような人事は、よもや行われていないですよね、文科大臣?

この審査会の法律の専門家が、みんなこの電力会社と関係の深い研究所と関わりがあって、それぞれそこの理事・所長・原子力損害法制検討班主査とか企画委員会委員長・研究部長・環境法制班主査とか、企画委員会委員・原子力行政に係る法的問題研究班主査であるなんてことはないですよね?



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