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放射性物質を含む汚泥の処理
2011.07.03
放射性物質を含む汚泥を肥料に利用してもよいという農水省消費・安全局の方針について全国で、懸念が表明されている。
リスクコミュニケーションの典型的な失敗例と言ってもよいかもしれない。
東京都などで汚泥の仮置き場が数ヶ月で溢れるおそれがあるが、その汚泥がルールなしで肥料として利用されることがないように基準値を定めたと、農水省はいう。
汚泥には集落排水から出るものと公共下水道から出るものがある。集落排水の汚泥は、流域内流通が基本で管理がしやすいので2年間の特例措置で、集落排水の地域内のみ利用可能。
広域化しやすいのはもう一つの公共下水道からでる汚泥のほうだ。
汚泥中の放射性セシウムの濃度が200Bq/kg以下であることが確認され、証明がつけられたものに限り、流通が認められる。
農水省消費・安全局は、非汚染農地(放射性セシウム濃度が平均20Bq/kg)10aにつきこの基準の汚泥4トンを施用しても農地土壌の放射性セシウムの濃度範囲に収まると説明する。
20Bq/kgの土壌の農地10aの深さ15cmまでに、セシウム基準を満たした4トンの汚泥を投入してもセシウム濃度の上昇は5Bq/kgにとどまり、そこで作られる農作物のセシウム濃度は0.5Bq/kgしか上昇しない。これは農作物のセシウム基準500Bq/kgと比べても極めてわずかであるというのが、農水省の考えだ。
セシウムを含む汚泥が基準なしで動かされるより、安全を考慮した基準をきちんと作って、それに則って動かす、あるいは動かせないということにしたいということらしい。
しかし、現状では、政府の規制値そのものに対する信頼が乏しく、それがただちに健康に影響を及ぼさないと言われても、はいそうですかというわけにはいかない。
子供を持つ親の気持ちとしては、放射能の絶対値よりも増えるか減るかというベクトルのほうが正直、気になっているのではないか。
基準値の何百分の一、何千分の一といっても、なぜ増える方向にしなければならないのか、減らす方向にしてほしいという声が上がるのは目に見えている。
汚泥の処理ができないという問題は、これから先も当分処理ができなければ、大きな問題となっていくだろう。それはみんな理解している。
だから規制値を作りましたといえば、これまでの対策本部のようにご都合に合わせて規制値を緩めたと思うだろう。いえいえ、動かせないような基準にしたのですというならば、単純にまず、禁止すればよかったのではないか。
まず、この規制値をいま定めることの必要性が伝わらない。次に、この規制値が意味することが伝わらない。
伝えようという努力がどれだけ行われたのだろうか。
そして、とにかく政府の基準に対する信頼性のなさは決定的だ。外国から専門家のトップを招いて、きちんと独立した目で確認をしてもらわないと、何をしても疑われるのではないか。
事故後のいい加減な対応のつけがまわってきた。
一度このルールを撤回して、きちんと議論した上で、ルールを作り直すように申し入れる。