黒い手袋
2008.09.18
僕がまだ中学生の頃、新自由クラブを立ち上げて全国を飛び回っていたオヤジが、久しぶりに家に帰ってきた。
暑い夏の日だった。
おい、一緒に風呂にはいるか、とオヤジに誘われて、風呂場に飛び込むと、オヤジが両手に黒い手袋をして湯船につかっていた。
なんで手袋して風呂に入ってるのと尋ねると、オヤジは怪訝そうな顔をしている。
よーく見ると、オヤジの両手は手袋ではなかった。ワイシャツの袖口から先が真っ黒に日焼けして、まるで手袋のように見えたのだった。連日、炎天下、街頭でマイクを握っていた日焼けだった。
オヤジが三十九か四十の頃だ。
今年、四十五になる自分の拳をみながら、オヤジの歩いてきた四十年の道のりを思う。