年金改革の方向
2006.05.24
一億二千七百万人の現在の日本の人口は、西暦二千五十年には一億人を割り込み、その三人に一人は六十五歳以上の高齢者になる。
こうした現実を前に、今、日本の政治がやらなければならない最大の問題は、信頼できる年金制度を創り出すことである。
全ての国民の基礎年金である国民年金は、その制度が信頼されていないために、加入者の多くが年金保険料を支払わない未納問題に悩まされている。未納 の保険料を徴収するために莫大なコストをかけて、また年金未納者の健康保険を停止するに至ってはまさに本末転倒である。そして、保険料未納のために国民年 金(三分の一が税金でまかなわれる)の給付が受けられない者を生活保護(全額を税金でまかなう)で救う現状は、さらに未納者を増やしている。
全ての国民に最低限の年金を保証する基礎年金は税金でまかなわれるべきである。国民年金の保険料を廃止し、明確に消費税を基礎年金の財源とするべきだ。
税方式を導入することにより、国民年金の未納問題はなくなり、国民年金の保険料を徴収するための組織も廃止することができる。
基礎年金の支給額を引き上げるならばそれをまかなうだけの消費税の引き上げが必要になるという関連も国民には非常にわかりやすくなる。
サラリーマンが加入している厚生年金も抜本改革が必要である。
厚生年金は、賦課方式の年金制度である。つまりその年に支払われる年金をその年に集めた年金保険料でまかなっている。別な言い方をすれば、退職した世代の年金を現役世代が支払う保険料でまかなっている。
しかし、少子化で次世代が減っていく中で賦課方式の年金制度を維持していこうとすれば、年金の給付額を減らしていくか、次世代の支払う保険料を増額 し続けるか以外に方法がない。厚労省は年金の支給開始年齢を引き上げることも選択肢の一つとして考えているようだが、いずれにしろ信頼される年金制度とは 言い難いものになってしまう。
少子化、人口減の日本社会に必要なのは、財源を次の世代に依存しない積立方式の年金制度である。つまり、それぞれが現役の間に年収の一定割合を積み立て、それを原資にして退職後に年金を支払う方式に移行するべきである。
積立方式への移行には、厚生年金の給付を今日受けている者の財源を国債等で手当てする必要があり、そのことを懸念する意見もあるが、少子化で維持不可能な制度にしがみついているよりは、はるかに良い選択だ。
年金制度の改革は、極めて論理的な議論が可能である。きちんと前提条件と保証するべきものの優先順位を決め、厚労省が持っているデータとプログラムを全て公開し、いろいろな改革案に実際のデータを入れてその結果を比べればよいのだ。
一部の官僚に仕組みづくりをまかせるのではなく、国民の前の党派を超えた論理的な議論の中から最前のものを作り出す時期である。