2004年5月20日号-2 また著作権法
2004.05.20
また著作権法改正。
Q:記録方式や媒体が違ったら同一製品とはみなさないことを明記してほしい。曲順やミックスが違えば違うものとみなされるのか。
A:同一であるかどうかは、音が同じかどうかということですので媒体が同じかどうかは問題になりません。
ただ、おそらくアナログとデジタルは音が違うことになるのではないかと思います。
曲順が違えば違うものです。ミックスが違えば違うものです。
ただ、同じものであっても違うものであっても、米英をはじめとする国からの輸入盤は止まりません!
Q:スガシカオの台湾盤を2079円で買い、ジャネット・ジャクソンのUS盤を1280円で買った。台湾の方がアメリカよりも価格が高い。台湾の方が先進国では。
A:改正案が取り上げているのは、小売価格の問題ではありません。
著作権者、著作隣接権者のライセンス料の問題です。ですから、小売価格がいくらだったかということは問題ではありません。
いずれにしろ、アメリカからの輸入盤は止まりません。
Q:大臣答弁で本当に担保できるのか。
A:国会での大臣の答弁というのは非常に重いものです。
たとえば我が国に対する急迫不正の侵害が云々という時には敵基地攻撃は可能であるという1956年2月29日の船田防衛庁長官の国会答弁が2003年の武力攻撃事態法にも反映されています。
著作権法の改正で最初から特定の国を除外することは出来ません。実際に輸入が規制されるためには、輸入を規制している法律の要件に該当するかどうかが問題になります。その実務について大臣が国会で明確にすれば、法の運用はそれに従います。
Q:米英独仏加ではアイルランドが入っていません。アイルランドの詩歌を収めた輸入盤が入手できなければ私の研究はストップします。
A:日本で販売されていないCDに関してはまったくこの改正案は適用されませんので、輸入は自由です。米英独仏加というのはあくまで例示ですのでこれ以外からの輸入に問題があるということではありません。
Q:ダウンロード販売についての対応はどうなっているか。
A:特に検討していません。
Q:著作権法の整備の遅れている国でネット上でダウンロード可能な状態になったらどうするのか。
A:これは海賊版です。もはや法律を整備する段階ではなく法律を厳格に執行するという問題です。
Q:輸入規制を税関で行う時の費用は著作権者が払うのではなく、税金が使われるのですか。
A:法律で定めた違法なものを我が国に持ち込ませない作業ですので当然に国の予算で執行します。
Q:改正案で著作権を特許権に置き換えると実にナンセンスな議論になる。
A:著作権法の目的は文化の発展に寄与することであり、工業製品と文化的所産は同列に論じられません。だからこそ著作物に限って輸入を規制している法律を六十五カ国が制定している野田と思います。
CDでも生産コストそのものは非常に小さいものですが、知的財産権から発生する権利に関する費用が問題になります。そこが主に生産コストが問題になる工業品との違いではないでしょうか。
Q:「日本での販売を禁止する」という表示に関しては法案に書いていませんが。
A:法案には表示が必要だとは書いてありません。
しかし、改正115条5項に「『情を知って』当該国外頒布目的で商業目的用レコードを国内において頒布する目的を持って輸入する行為..」という部分がありますが、その『情を知って』というところを客観的に判断するために、当該レコードに表示がしてあることという要件が必要になります。
表示ということをストレートに法案に書くと、表示が剥がれた時はとか、権利を持っていない者が表示をした時はなどについて法案のなかで手当をしなければならなくなり、法案が非常に複雑になってしまうのを避けたためです。
Q:著作権に関する国際協定のうち、著作者(音楽の場合、作詞家・作曲家)の権利(著作権)に関する「ベルヌ条約」に関しては、ベルヌ同盟国が条約上の義務を超えて与えた権利に関して内国・外国民を問わず当該権利を適用すべき義務を定めておりますが、一方、レコード会社等、レコード原盤に関する権利(日本では「著作隣接権」という。)に関する権利を有する者(著作隣接権者。著作隣接権者には歌手等の「アーティスト」も含まれる。)に関する国際協定についていえば、WTO TRIPS協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)を含め、条約上定められる義務以上の義務を協定締約国が定めたとしても、それを内外無差別に適用する必要はありません(TRIPS協定第3条第1項)。従いまして、今回の「レコード輸入権」に関しては、著作者には権利を与えず、我が国の国民である著作隣接権者に対してのみ措置をすることを前提に条文の書きぶりを工夫すれば、いわゆる「邦楽の還流盤」に対してのみ適用される法制度を作ることは不可能ではありません。
A:ウァーオ!
ご提案は、頭の体操としてはあり得ると思いますが、著作権者の権利を保護せず、隣接権者の権利だけ保護するというのは現実的ではありません。また、諸外国から同様の報復を受ける可能性もあり、政治的にももたないでしょう。