日本周辺のミサイル

2020.07.24

日本のミサイル防衛を議論するにあたり、日本の周辺国が持つミサイルの能力を把握する必要があります。

北朝鮮の持つスカッドER(Extended Range)、ノドン、あるいは潜水艦発射型のミサイルなどは、我が国を射程内に捉えています。

また、近年新たなミサイル技術の獲得を目指し、ミサイルの発射を繰り返しています。

スカッドERは、スカッドの胴体部分の延長や弾頭重量の軽量化などにより射程を延長した弾道ミサイルで、射程は約1000kmに達するとみられており、わが国の一部がその射程内に入ると考えられています。

また、北朝鮮は、スカッドミサイルを改良した弾道ミサイルを開発しています。

この弾道ミサイルは、2017年5月に1発が発射され、約400km飛翔し、わが国の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと推定されています。

北朝鮮は、これを、新たに開発した精密操縦誘導システムを導入した弾道ロケットだと発表しました。

北朝鮮が公表した画像に基づけば、キャタピラ式のTELから発射される様子や弾頭部に小型の翼とみられるものが確認されるなど、これまでのスカッドとは異なる特徴が確認される一方、弾頭部以外の形状や長さは類似し、液体燃料推進方式のエンジンの特徴である直線状の炎も確認されました。

この弾道ミサイルは、終末誘導機動弾頭(MaRV:Maneuverable Re-entry Vehicle)を装備しているとの指摘もあります。

金正恩委員長が、敵の艦船などの個別目標を精密打撃することが可能な弾道ミサイル開発を指示したと発表していることも踏まえれば、弾道ミサイルによる攻撃の正確性の向上を企図しているとみられます。

ノドンは、単段式の液体燃料推進方式の弾道ミサイルで、TELに搭載され移動して運用されます。

射程は、約1300kmに達するとみられており、わが国のほぼ全域がその射程内に入ります。

ノドンの性能の詳細は確認されていませんが、命中精度については、スカッドの技術を基にしているとみられていることから、特定の施設をピンポイントに攻撃できるような精度の高さではないと考えられています。

しかし、2016年7月に発射されたノドンの画像で、弾頭部の改良により精度の向上と弾頭重量の軽量化により長射程化(1500km)が図られたとみられるものが確認されています。

北朝鮮は、2015年5月に北朝鮮メディアを通じてSLBM(北朝鮮の呼称によれば「北極星」型)の試験発射に成功したと発表し、これまでに4回、発射を公表しています。

これまで北朝鮮が公表した画像及び映像から判断すると、空中にミサイルを射出した後に点火する、いわゆる「コールド・ローンチシステム」の運用に成功している可能性があります。

また、2016年4月及び8月に発射されたミサイルから噴出する炎の形及び煙の色などから、固体燃料推進方式が採用されていると考えられます。

一般的に、固体燃料推進方式のミサイルは、固形の推進薬が前もって充填されており、液体燃料推進方式に比べ、即時発射が可能であり発射の兆候が事前に察知されにくく、ミサイルの再装填もより迅速に行え、かつ、保管や取扱いも比較的容易であることなどから、軍事的に優れているとされています。

おそらく北朝鮮は奇襲的な攻撃能力の向上を図っているものとみられます。

これまで、「北極星」型SLBMと推定される弾道ミサイルとして、わが国に向けた飛翔が確認されたのは、2016年8月に発射されたもので、約500km飛翔しました。

この時発射されたものは、通常よりもやや高い軌道で発射されたと推定され、仮に通常の軌道で発射すれば、射程は1000kmを超えるとみられます。

また、「北極星」型SLBMはコレ級潜水艦(排水量約1500トン)から発射されているとみられますが、北朝鮮は現在、同潜水艦を1隻だけ保有しています。

SLBM発射のためのさらに大きな潜水艦の開発を追求しているとの指摘もあります。

さらに北朝鮮は、2019年10月2日に、「北極星」型SLBMとは異なる、新型と推定されるSLBM(北朝鮮の呼称によれば「北極星3」型)1発を発射し、450km程度飛翔したと推定されます。

この時発射されたものは、最高高度が約900kmに達し、ロフテッド軌道で発射されたと推定され、仮に通常の軌道で発射されれば、射程は「北極星」型SLBMを超えるとみられます。

こうしたSLBMとSLBMの搭載を企図した新型潜水艦の開発は、弾道ミサイルによる打撃能力の多様化と残存性の向上を企図しているものと考えられます。

さらに北朝鮮は、「北極星」型SLBMを地上発射型に改良したとみられる弾道ミサイルを、2017年2月及び5月に発射しています。

いずれも、通常よりもやや高い軌道で発射されたと推定され、仮に通常の軌道で発射されたとすれば、その射程は1000kmを超えるとみられます。

北朝鮮は、発射した弾道ミサイルを「北極星2」型と呼称し、2016年8月のSLBM発射の成果に基づき地対地弾道弾として開発したと発表しています。

また、「北極星2」型の「部隊実戦配備」を承認したと発表しています。

北朝鮮が公表した画像では、キャタピラ式TELから空中にミサイルを射出した後に点火する、いわゆる「コールド・ローンチシステム」により発射される様子や固体燃料推進方式のエンジンの特徴である放射状の噴煙が確認できます。

「コールド・ローンチシステム」や固体燃料推進方式のエンジンを利用しているとみられる点は、SLBMと共通しています。



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