おすすめの一冊「One Bullet Away」
2023.09.12
おすすめの一冊「One Bullet Away」 By Nathaniel Fick
日本やヨーロッパをはじめデジタル大臣を置く政府が増えているなかで、アメリカ政府にはデジタル大臣はいません。
G7デジタル大臣会合の根回しのため各国を回ったときに、ワシントンでは国務省、商務省、USTR、国土安全保障省、ホワイトハウスを訪問することになりました。
G7やG20のデジタル大臣会合には、国務省のナサニエル・フィック米サイバー空間・デジタル政策局(CDP)大使がアメリカを代表して参加しています。
フィック大使は、ダートマス大学を卒業後、海兵隊に入隊し、将校として小隊を率いてアフガニスタンとイラクの戦闘に参加しています。
その経験を書いたのがこの”One Bullet Away-The Making of a Marine Officer”で、ニューヨークタイムズベストセラー、ワシントンポストの「ベストブックオブザイヤー」、ミリタリータイムズの「ベストミリタリーブックオブザデケイド」に選ばれ、コルビー賞を受賞しています。
海兵隊の将校になるための訓練や少尉として歩兵を率いるための訓練などについて、その厳しさ、それぞれの訓練の背景がよくわかります。
また、イラク戦争の始まりと同時にバグダッドへ侵攻した海兵隊の一員としての経験が細かく書かれていますが、戦後のイラク統治が難しくなるであろうことをうかがわせるさまざまなエピソードがそこここに出てきます。
One Bullet Awayというタイトルは、フィック少尉の上官も口にしていますが、「将校と下士官の違いはなにか」「一発の銃弾である」、つまり小隊を率いる少尉が一発の銃弾で倒れたら、下士官がすぐに指揮をとって戦い続けなければならないという意味でしょう。
369ページ、残念ながら邦訳はないようです。
これまで私が仕事をしてきた米国の要人のなかで、軍の経験を持つ人は少なくありません。
マイク・ポンペオ国務長官とマーク・エスパー国防長官は、ウェストポイントの同期ですし、もちろんマティス国防長官は海兵隊の大将でした。
マクマスター国家安全保障問題担当大統領は元陸軍中将、補佐官マット・ポッティンジャー国家安全保障問題担当大統領副補佐官も海兵隊でした。
エマニュエル駐日大使も、湾岸戦争のなかで、民間ボランティアとしてイスラエル北部の基地でイスラエル国防軍のトラックの修理をしていたことがあります。