行旅病人及行旅死亡人取扱法
2023.04.19
行旅病人及行旅死亡人取扱法という法律があります。
明治32年に制定された、旅行者が病気になったり、死亡したりした時の取扱を定めた法律です。
その第9条は
「行旅死亡人ノ住所、居所若ハ氏名知レサルトキハ市町村ハ其ノ状況相貌遺留物件其ノ他本人ノ認識ニ必要ナル事項ヲ公署ノ掲示場ニ告示シ且官報若ハ新聞紙ニ公告スヘシ」
とあります。
この「公署ノ掲示場ニ告示シ且官報若ハ新聞紙ニ公告スヘシ」というところが、デジタル庁が進めているアナログ規制撤廃に引っかかります。
つまり、この条項は、掲示場という特定の場所に行ったり「新聞紙」などの紙を見たりといったアナログな方法を強制しているので、これを改正して、デジタルでいつでもどこでも必要な情報を見られるようにします。
新9条は、
「行旅死亡人ノ住所、居所又ハ氏名知レザルトキハ市町村ハ其ノ状況相貌遺留物件其ノ他本人ノ認識ニ必要ナル事項ニ付テ公署ノ掲示場ニ告示シ官報ニ公告シ及厚生労働省令ノ定ムル所ニ依リ電気通信回線ニ接続シテ行フ自動公衆送信(公衆ニ依リ直接受信セラルルコトヲ目的トシ公衆ノ請求ニ依リ自動的ニ送信ヲ行フコトヲ謂ヒ放送又ハ有線放送ニ該当スルモノヲ除ク)ニ依リ公衆ノ閲覧ニ供スベシ」
となります。
自動公衆送信とは、インターネットのことです。
インターネットが生まれる遙か以前に制定されたカタカナ交じりの法律に、インターネットが書き込まれることになります。
戦国時代に近代兵器が出てくる映画「戦国自衛隊」のような感じです。
明治32年の法律のカタカナには濁点がないので「スヘシ」とかいて「スベシ」と読んでいますが、今回の改正でそこは「スベシ」に改められます。なお、改正後も「官報」という言葉が残っていますが、明治16年の創刊以来ずっと紙で発行されてきた官報の電子化も検討しているところです。
なんかちょっとタイムマシンに乗った気分です。