ロシア制裁の実効性

2022.05.27

2022年4月までの対ロシア制裁の実効性がどうであったか、まとめてみました。

まず、西側諸国は、ロシア中央銀行の外貨準備の60%を凍結しました。

これにより、ロシア中央銀行は、これらを使ってルーブルの価値を守ることができなくなり、ロシアにとって、輸出から得る外貨が、政府の収入と外貨準備の両方にとって非常に重要になりました。

2002年から2021年にかけて、ロシアの輸出収入の約6割が石油、石炭、天然ガスによるものでした。

これまでは石油が最も重要な輸出品目でしたが、天然ガスの価格が前年同期比で6倍、2021年の平均価格と比較しても2倍と高騰したため、天然ガスの重要性が石油を凌ぐようになりました。

エネルギー価格の高騰もあり、ロシア経済にとって、石油と天然ガスの輸出が命綱になり、堅調なエネルギー輸出がルーブルの価値を支えています。

ロシアの石油輸出の約60%がヨーロッパ向けで、その内の三分の二は船で運ばれ、その残りはウクライナとポーランドを経由するパイプラインで輸送されます。

また、ロシア産の石油の20%程度が中国向けで、その半分は船、半分はパイプラインで供給されています。

インド向けの石油供給は、ロシア産石油の1%未満と言われていましたが、制裁後、増えています。

ロシア産の天然ガスの85%はパイプライン経由、15%はLNGとして船で輸送されており、その60%はヨーロッパ向け、パイプラインで輸出される天然ガスの三分の二はEU向けです。

パイプラインによる供給の2割はトルコ向けで、その他にベラルーシ、日本、韓国が主要な輸出先となっていて、また、中国もロシアの天然ガス輸出の7%を占めています。

現在、ロシアの主要ガス田から東に天然ガスを送るパイプラインはなく、ヨーロッパ向けの天然ガスを中国に送るための計画中のパイプラインも運用開始までには時間がかかります。

カスピ海パイプラインが悪天候による被害を受け、輸出ができなくなったものの、ヨーロッパ向けの石油の供給には大きな変動はないものの、ブレント価格とロシア産のウラル価格の差が開いています。

ロシア産天然ガスのパイプライン経由の供給は、侵略前に比べて増加し、また、LNG輸出も増えています。

これは石油価格の上昇を受けて、ヨーロッパのバイヤーが引き取りを増やしていることによると思われます。

侵略後、一時的に天然ガス価格が暴騰し、その後、落ち着きましたが、依然として侵略前の価格を上回っています。

他国からのヨーロッパ向けのLNG供給が増えていること、気温が上昇してきたことを受けて、価格は低下傾向にありますが、依然としてヨーロッパにおける天然ガス価格は、昨年の二倍となっています。

EUやイギリスがロシア産の石油と天然ガスの輸入をストップしても、価格の高騰により、ロシアの収入は、現時点で、2021年よりも5%収入が増加することになると思われます。

そのために、ロシアの経済や財政は、制裁開始当初のダメージから比較的早い立ち直りを見せています。

ロシア経済が天然ガス輸出への依存を高めているため、今後、ロシアがヨーロッパ向けの天然ガスの供給を止めることは考えにくい状況にありますが、もし、ヨーロッパがロシア産の天然ガスと石油の調達を止めることができれば、ロシアの輸出収入は4割減少することになります。

ロシアはエネルギー輸出による外貨収入がなければ、ルーブルの価値を維持することができず、国内のインフレはさらに進み、また、必要な物資の輸入ができなくなっていきます。

国際的な対ロシア制裁に加わる幅広い協力の枠組みを作っていくことが、これからますます重要になります。



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