東京新聞の社説二編

2020.08.01

7月11日付けの東京新聞の社説「中国は挑発をやめよ」は、南シナ海の現状をよく解説している。
 
中国が行った軍事演習、それに対する米国の「南シナ海情勢をさらに不安定化させる」という懸念の表明、それを無視し演習を行った中国。
 
ASEANが足並みを揃え強い表現で「懸念表明」するに至った状況。
 
しっかりと書かれている。
 
南シナ海は、日本を含め多くの国にとって重要なシーレーンであり、この海域の航行の自由は国際社会全体にとっても大きな課題だ。
 
「南シナ海で中国が軍事力誇示を強めていることに対し、米国や東南アジア諸国連合(ASEAN)が対抗する動きを示している。これ以上緊張を高めないよう、中国は挑発的な行動をやめるべきだ。」
 
そのとおりだ。
 
7月14日付の東京新聞には「陸自オスプレイ」と題する社説が載った。
 
「周辺住民や地方自治体の理解を十分に得られているとは言い難い」という見出しになっている。
 
我が国を取り巻く安全保障環境を見ると、中国の国防予算の拡大が著しく、また、中国軍の活動は質、量ともに急速に拡大している。
 
尖閣諸島周辺の接続水域には機関砲らしきもの搭載した船舶も含む中国公船が100日を超えて侵入しているのが現実だ。
 
我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くためには、力を背景とした現状変更を容認しないという明確な意思を示すことが大切だ。
 
我が国の南西諸島は全長1200kmにも及ぶ広大な地域であるにもかかわらず、2018年まで陸自部隊は沖縄本島及び与那国島にしか配備されてこなかった。
 
南西諸島の守りを固めるため、初動を担う陸自部隊を奄美大島と宮古島に配備し、石垣島への配備も進めている。
 
さらに島嶼防衛のためには島嶼が侵攻を受けたときにいち早く駆けつける能力を整備する必要がある。
 
そのため、2018年に水陸両用作戦機能を備えた島嶼防衛の要となる水陸機動団を長崎県佐世保市に新編した。
 
その水陸機動団が有事に島嶼にいち早く駆けつけるための手段がV-22オスプレイだ。
 
オスプレイは陸上自衛隊が現在保有している輸送ヘリCH-47JAと比べ、最大速度が約2倍、航続距離と最大飛行高度が約3倍という高い性能を有している。
 
輸送ヘリで四時間かかるところをオスプレイならば二時間で駆けつけられる。
 
さらに飛行場がなく固定翼機が離着陸できない離島でもオスプレイは垂直離着陸することができる。
 
このためにオスプレイは離島の急患輸送や災害救援でも大きな力を発揮することになる。
 
2020年6月一か月で自衛隊による急患輸送は26件、その内沖縄・九州で24件。
 
この社説は、こうしたオスプレイ導入の背景には何も触れていない。
 
読者に対して極めて不親切であり、ミスリーディングだと言われても仕方ないのではないか。
 
そして最後に「そもそも陸自に必要不可欠な装備なのか」。
 
この社説は、「必要不可欠なのか」と問いかけながら、その問いに対する答はなく、では島嶼防衛にどう対応すべきなのか、急患輸送をどう改善すべきなのか、代替策の提案もない。
 
また、「オスプレイは開発段階から墜落事故を繰り返し、実戦配備後も安全性への懸念が指摘されてきた軍用機だ」というが、米国政府はもとより、日本政府としてもその安全性について検証を重ねてきており、オスプレイの機体は十分に安全性が確認されている。
 
オスプレイは2007年に実戦配備されて以来、10年以上にわたってイラクやアフガニスタンをはじめ、様々な地域で約360機も運用され、米軍の若者を乗せて飛んでいる。
 
このような運用実績そのものが、オスプレイが安全であるという何よりの証拠ではないか。
 
もしオスプレイの安全性に問題があれば、そもそも米国軍人の家族が黙ってはいないだろう。
 
この社説のように、我が国の安全保障に関してはまったく意に介さず、国防のための努力にひたすら反対するだけでは、軍事拡大に邁進する中国を利するだけではないか。
 
バランスの取れた主張とはとても言えないだろう。



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