おすすめの本
2018.10.05
不定期にやっている「おすすめの本」シリーズです。
(シリーズにしては間が空いています)
「Six Minutes in May」 by Nicholas Shakespeare
How Churchill unexpectedly became Prime Ministerという副題がついていますが、ネヴィル・チェンバレンからチャーチルへの政権移行のことを当時の関係者の出版されていない日記なども含め、丹念に調べた本です。
辻一弘さんがアカデミー賞のメイクアップ&スタイリング賞をとった映画で「Darkest Hour」(邦題「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」)というのが最近ありました。
たしかにチャーチルがリーダーシップを発揮して、イギリスがナチスドイツに対して単独で戦い続け、やがて反転攻勢をかけて連合国側が勝利を収めるのですが、なぜ、チャーチルがあの場面で首相になったのか、もっといえば、なぜ、チェンバレンが首相を辞めたのか、チャーチルがどういうメカニズムで後継に選ばれたのか、謎だらけでした。
チャーチルが後年自ら筆を執ったThe Gathering Stormを読んでも、そこはよくわかりません。
イギリスのノルウェー戦線の失敗とそれに続くイギリス議会での議論、そしてその議論がふとした拍子に転換し、議会で投票が行われ、そのわずか六分間を要した投票の結果が、チェンバレンの退陣に結びついていく様子をしつこいぐらい(かなりしつこい)調べて描いています。
チェンバレン、チャーチル、そして後継者として本命だったハリファックス卿、あるいはその他の関係者の記録や記憶はいずれも食い違い、真実は羅生門状態ですが、チャーチルが首相になったのは当然でも何でもなかったことがわかります。
実はこの本に出会ったのは、トランジット中のバンコクの空港の小さな本屋でした。
タイ語の本の中に、小さな英語のコーナーがあり、そこにこの本がありました。
しかし、イギリスの政治家は、よく、こんなに日記をつけていたんだなと感心します。
私も日記をつけようかな。