エルニーニョの影響に気づいていますか
2016.12.16
気象庁のホームページには、「エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象です」とあります。
この太平洋の南米沿岸のエルニーニョが、なんとインド洋沿岸のアフリカ南部に大異変をもたらしています。
アフリカ南部のタンザニア,ザンビア,ボツワナ,モザンビーク,アンゴラ,ジンバブエ,レソト,スワジランド,マラウイ,ナミビア,南アフリカ,モーリシャス,コンゴ(民),マダガスカル,セーシェルの各国は、南部アフリカ開発共同体(SADC)を組織しています。
SADCは、もともと南部アフリカ諸国が,アパルトヘイト体制下の南アフリカ旧政権の経済的支配から脱却することを目的として設立した南部アフリカ開発調整会議(SADCC)から始まりました。
南アフリカがアパルトヘイトを撤廃した後の1992年に「南部アフリカ開発共同体(SADC)」に名称を変更し、アパルトヘイトを撤廃した南アも1994年に加盟しました。
SADC各国の経済は、石油、金、銅、プラチナなどの資源に依存しているところが大きく、近年の資源価格の低迷が大きなマイナスの影響を与えていました。
その結果、これらの国々の為替レートが下落しています。
さらにこの地域の旱魃で、水力発電に頼っている電力供給に問題が生じて、一日十二時間の停電が起きている地域もあります。
その結果、工場が閉鎖され、失業者が増えています。
そこにエルニーニョの影響による大旱魃が追いうちをかけてきました。
この地域はトウモロコシが主食です。
南部アフリカは11月から3月ごろにかけてが雨季で、それに合わせて作付が行われ、翌年の4月、5月ごろが収穫期です。
ところが2016年の収穫が不調で、2016年6月には危機が宣言され、7月には飢餓が始まりました。
南部アフリカの4000万人が食料危機に直面しています。
アフリカ南部全体で、栄養不足による発育阻害が大規模に発生しつつあります。マラウイ、マダガスカル、モザンビーク、ザンビアでは40%以上の子供が発育阻害の危機に瀕しています。
発育阻害(Stunting)とは、生後2年までの乳幼児期に栄養不良に陥り、背が伸びないなどの回復不能な影響を受けた症状です。
また、ヨウ素の欠乏が知能発育不全や脳障害を起こし、学業にも影響して、生涯収入の低下につながっていることが数々の研究で明らかになっています。
南部アフリカはHIVに感染している人の割合が高く、15歳から49歳の感染率が20%を超えている地域もあります。
エイズの発病を抑える薬剤の投与が行われていますが、この薬を使用するためにはきちんと食事をとる必要があります。
また、こうした国々の財政も逼迫し、薬剤の配布も滞りつつあります。
飢餓の訪れと同時に薬を飲めなくなった人が多くなり、エイズの発病が増えていくことも予想されています。
その結果、この地域の経済発展はさらに遅れを取ることにつながります。
我が国は、2016年に$2400万ドルをWFPに拠出して、マラウイやコンゴ民主共和国、モザンビークをはじめとする9か国で支援を続けています。
特にマラウイでは、マラウイの歴史上、最も巨額で、最も長期にわたる人道支援につながっています。
http://ja.wfp.org/news/news-release/160721