エネ庁の陰謀
2016.09.11
この夏、エネ庁の中を怪文書が駆け回っている。
その怪文書を持って、議員会館の中をせっせと回る官僚もいる。
それをすっぱ抜いたのが9月8日付けの毎日新聞の記事だ。
東京電力の福島第一原発の廃炉費用や事故の賠償費用に、そのほかの原発の廃炉費用を合計すると8.5兆円になり、その負担を電力会社だけでなく、新電力にも求めようというスキームが描かれている。
電力自由化で、大手の電力会社から新電力への切り替えが進むと大手の電力会社の負担が増えるので、それを救済しようというエネ庁の画策だ。
つまり、電力の供給に大手電力会社の送電網を使わざるを得ない新電力が負担する託送料金にこうした費用を上乗せして徴収し、新電力と契約した消費者にも負担をさせようというのだ。
安倍政権で進めてきた電力自由化に全く逆行する。
電力自由化の狙いの一つは、大手電力会社と新電力が競争し、あるいは地域独占で高い利益を上げてきた大手電力会社同士が競争し、電力料金が下がっていくことにある。
新電力の消費者が使ってもいない原発のコストを負担させられたら電力自由化は意味を失う。
過去にNTTの電話を使ったことがあるからといってauやソフトバンクの利用者にDoCoMoのコストを負担させるようなものだ。
そもそも原発のコストはバックエンドを含めても安いとエネ庁も電力会社も主張してきた。 もちろんそれが明らかな嘘であると知りながら。
2012年9月21日付けのブログ「原発再稼働と電力会社の経営」 http://www.taro.org/2012/09/post_1266.php で、廃炉費用の引き当て不足について書いたが、電力会社は利益を増やすために必要な廃炉の引き当てをしてこなかった。
利益は懐に入れさせておいて廃炉費用を国民に押し付けようというのはおかしい。
もともと原発のコストには、バックエンドから事故の賠償から、すべて入っての計算のはずだ。 経営判断としてそれを推し進めてきたのだから、その責任は電力会社が負担するのは当然だ。
さらにこれまで電力会社やエネ庁が主張してきた廃炉費用の見積もりにも疑念がある。
ドイツの廃炉費用の見積もりやすでに始まっている東海原発の廃炉費用の見積もりと比べて、大幅に安い。
さらに資産計上されている核のゴミについても本当に資産なのかどうか疑わしい。
さらに福島第一の事故に関する費用は膨れ上がる一方だ。
原発で儲けた電力会社は、当然に、原発事故に関する賠償や費用を負担する必要がある。
資本主義の中で、利益を出している上場企業に税を投入したり、株主、経営者、貸し手の責任が追及される前に消費者に負担が押し付けられるようなことがあってはならない。
事故から5年、国民ももはや原発のことはそれほど気にしていない、声を上げないというのが今のエネ庁の考えだ。
そして喉元は過ぎたというエネ庁が正しいのかどうか、電力会社は静かに見ている。