国保の第三者求償

2015.12.26

行政改革の端緒はいろいろなところにあります。

例えば鶴保庸介参議院議員からは「国民健康保険の第三者求償」がないがしろにされているので、行革担当大臣としてフォローをしてほしいとの要請をいただきました。

国民健康保険の第三者求償とはなんでしょうか。

例えば自動車事故の被害者になった場合、まず被害者の多くは自分の医療保険を使いません。

相手の自賠責保険を使い、医療機関は損保に診療報酬相当分を請求します。

自賠責保険は障害による治療費の限度額は120万円ですので、この範囲内と見込まれて、被害者に過失がない場合の多くはこのケースになります。

しかし、なかには被害者が医療保険(国保、健保組合、協会けんぽ等)を使うケースがあります。

その場合、被害者がかかった医療機関は国保など保険者に保険診療分を請求します。

保険者が負担したこの分は、本来、保険者が負担するべきものではなく加害者又は加害者が加入している損保が支払うべきものです。

そこで保険者がこの分を損保に請求することを第三者求償といいます。

鶴保参議院議員の問題提起は、この第三者求償が国民健康保険の場合、ほとんど行われていないというものです。

社員が被保険者である健保組合などが、第三者求償をすべき事案を発見しやすいのに比べ、国保は難しいようです。

国保にとって、支払った金額を第三者求償すべきものかを知るためには、被害者からの届け出を受ける、医療機関からの届け出を受ける、レセプトを精査して発見する、損保会社からの届け出を受けるなどの必要があります。

しかし、現実には届け出がきちんと出されておらず、レセプトで発見するケースも多くありません。

結果として、本来、損保が負担するべき分を国民健康保険が負担してしまっています。

鶴保参議院議員の試算では、和歌山県だけでこの分がかなりの額にのぼる可能性があります。

厚労省の保守的な見積もりでも全国で数十億円になるようです。

国保による第三者求償の件数を都道府県別にみてみると、年間に国保の被保険者1000人あたりにして、宮崎県は4.5件を超えているのに対し、山口県は0.5件程度にとどまっています。

東京都が1.8件に対して神奈川県は0.8件、大阪府は1.0件です。和歌山県では1.5件です。

宮崎県の数値が高いのは、ある自治体に、この第三者求償に熱心な職員がいて、せっせと求償業務を行っているからのようです。

それでこれだけ数値にばらつきが出るということはあまり熱心に取り組んでいない自治体が少なからずあるということでしょう。

まず、本来保険者に対して支払われるべき保険金のうち未払いになっているものがどれぐらいあるのかを調べるように厚労省に指示しました。

その後、交通事故など第三者求償の対象になる保険金の支払いが起きた場合は、きちんと国保など保険者に届け出を出すよう損保と協定を結ぶことにしました。

社会保障の効率化を叫ばれている中で、国保で起きている数十億円にものぼるこうした取りはぐれはなくさなくてはなりません。

鶴保参議院議員に感謝です。



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