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ボッタクリをなくせ!
2014.03.13
2013年11月6日に「経産省によるボッタクリ」というタイトルで、「経産省による回避可能費用は不当に安く計算され、消費者が負担する再エネ賦課金が巨額になっている。」というブログを書いた。
http://www.taro.org/2013/11/post-1418.php
固定価格買い取り制度の対象になる再生可能エネルギーは、電力会社が買い取らねばならない。
しかし、買い取った電力の分、電力会社は自前の発電をしなくても済むため、電力会社は費用を一部削減することができる。
この電力会社が削減できた分を回避可能費用と呼び、電力会社の買い取り費用からこの回避可能費用を引いた金額が、消費者が負担する再生可能エネルギー賦課金になる。
再生可能エネルギー賦課金=再エネ買取費用+事務経費-回避可能費用
そのため、回避可能費用の計算はとても大事で、これが不当に低く計算されると、消費者が負担する再生可能エネルギー賦課金が必要以上に高くなる。
しかし、これまでは水力や原子力のような発電単価の低い電源を含めた全電源の平均費用を回避可能費用としていた。
しかし、本来、電力会社はコストの高い電源から止めるべきであり、この回避可能費用の算出はおかしい。
その結果、回避可能費用が少なくなり、消費者の負担が過大になっているというのがそのブログの要旨である。
それに対して「この論旨の一部は、全くの間違いであり、「ボッタクリ」という表現は適切ではない。」という反論が出された。
「回避可能費用は電力事業者にとってみれば電気の仕入れ価格であり、計算方法を変更して回避可能費用が上がることは、電気料金の原価上昇を意味する。総括原価主義のもとであろうが、自由化されようが、原価が上昇すれば電気料金上昇につながる。」
この反論はおかしい。
再生可能エネルギーを買い取ることによって電力会社が支出を免れたコストが回避可能費用であり、それが電力料金に影響を与える、与えないにかかわらず、その算定を適正にするのは当たり前のことではないか。
さらにもう一度、『 』に気を付けて、この反論を読んでみてほしい。
「しかし、回避可能費用は電力事業者にとってみれば電気の仕入れ価格であり、計算方法を変更して回避可能費用が上がることは、電気料金の原価上昇を意味する。『総括原価主義のもとであろうが、自由化されようが』、原価が上昇すれば電気料金上昇につながる。」
総括原価主義のもとでは、原価が上がれば電気料金は上がる。
つまり、回避可能費用が上がって再エネ賦課金が下がれば、電力会社の電力購入費用が増え、電力購入費用は「原価」だから総括原価がその分増えて、電力料金が高くなる。
だから消費者は、再エネ賦課金が下がった分、電力料金で負担しなければならないから、同じことだと言いたいのだろう。
しかし、電力料金が自由化されれば、そうはいかない。回避可能費用が上がり、再エネ賦課金が下がったからといって、電力会社は電気料金を高くすることができるだろうか。
例えばトヨタが、原価が上がったから当然に自動車の販売価格が上がります、というだろうか。
モノの値段が市場価格で決まっているマーケットでは、原価が上昇したからといって、当然には価格は上がらない。電力会社は、まず、水膨れしたコストを削らなくてはならない。
総括原価主義のもとでは、原価が上がれば電気料金は上がるが、「自由化されようが原価が上昇すれば電気料金上昇につながる」ことはない。
電力市場の自由化はプログラムに沿って着々と進む。総括原価で電力料金が決められた時代はもうそろそろ終わる。
だから今、きちんと回避可能費用を計算しておかないと、自由化されても再エネ賦課金が不当に高くなってしまう。
日本には、余った電力を取引する卸電力市場というものがある。電力会社が電力を調達することが必要になった場合、この卸電力市場で調達することができる。
だからこの卸電力市場での取引価格を回避可能費用にすればよいのではないかという提案もしている。
例えば、現在、新電力の回避可能費用はこれまでの電力会社の回避可能費用の平均とされている。
この費用が極端に安くなっているため、新電力は再生エネルギーを回避可能費用相当額で購入し、それをそのまま卸電力市場で売却してサヤを抜いて儲けるということができてしまう。
これを見ても回避可能費用が安すぎるのがわかる。
回避可能費用は、少なくとも卸電力価格であるべきだ。
この提案にも反論がでた。
「卸電力価格を使うという提案は...合理性が高い。しかし、日本の卸市場は小売販売電力量の0.5%しかなく、FITの買取発電量と比べても1/3程度しか無い。これを回避可能費用の参照価格とするのは時期尚早であるように思える。」
我が国の電力の卸市場が小さいのは、東京電力をはじめとする電力会社の嫌がらせによるところが少なくない。
例えば、3.11直後に東京電力が、東電管内の送電網を卸電力市場で取引された電力に対してクローズしたのは記憶に新しい。
東京電力は、計画停電をやらねばならないほど供給が逼迫していると言いながら、供給余力のある企業に対して送電網へのアクセスを拒否するという暴挙にでたのだ。
現状のように、卸電力市場で電力を調達するよりも、回避可能費用で再生可能エネルギーを買ったほうが安いという状況では、ますます卸電力市場は利用されなくなる。
電力改革には卸電力市場の更なる整備が不可欠なのに、これまでのような安い回避可能費用は市場をゆがめる。
この反論でも卸電力市場が一定の大きさになれば卸電力価格を回避可能費用にできるといっているようだから、卸電力市場をみんなで育てていかなければならない。
すでに経産省は回避可能費用がおかしかったことを認め、修正に入っている。
「こうした検証を経ずに「ボッタクリ」といった刺激的な言葉を使うことは決して生産的ではない。また、この議論に時間を費やすよりは、いかに再エネを合理的に拡大していくか、普及策としてFITがふさわしいのかについて改めて議論を行うほうが建設的ではないだろうか。」とこの反論は言う。
しかし、回避可能費用をきちんと計算すれば、再エネ賦課金は下がる。
そして電力市場が自由化されれば、総括原価も廃止され、電力会社は電力購入費を単純に総括原価に加えて消費者からとることができなくなる。
おかしな回避可能費用を定めて、再エネ賦課金を人為的に高く設定したのは『ボッタクリ』以外のなにものでもない。
電力会社と経産省に騙されてはいけない。