雇用特区について

2013.10.15

アベノミクスの三本目の矢、規制緩和をどれだけ進めることができるかが問われる臨時国会が始まった。
三本目の矢として期待の大きい国家戦略特区に関して、さまざまな役所から抵抗が行われている。
国家戦略特区の枠組みとその規制緩和の内容の両方が問題になる。
内容でいえば、医療、雇用、教育、都市再生、農業、地方議会、歴史的建築物の七分野、十五項目(十八項目と数える数え方もある)が挙げられているが、おそらく、このうち十項目は特区で認められそうな勢いだ。
しかし、官僚の抵抗が大きいものもある。
そのうちの一つが雇用に関する特区だ。
雇用特区の目的は、起業後の企業やグローバル企業が優秀な人材を集めやすくする、また、優秀な人材がより働きやすい雇用形態を作ろうというものだ
新ルールは、もちろん、雇用特区に指定された地域に限定され、弁護士や会計士などの専門資格を持った者、あるいは博士号や修士号を持った者が対象となる。
こうした対象者が、雇用特区内で、起業後五年以内の企業や外国人従業員比率が一定以上(議論されているのは、例えば三割)のグローバル企業を相手に、新たな雇用契約を結ぶときに、新ルールが適用されることになる。
現在は、五年を超える有期雇用は、労働者に無期転換権が与えられるが、新ルールでは、「無期転換をしない」ということを企業、雇用者合意の上、雇用契約に盛り込むことができる。
また、現在は、解雇を巡って裁判になった時に、予測可能性が低いことが問題とされているが、雇用特区の特区本部が定めるガイドラインに適合した解雇の要件や手続きを、両者合意の上で、契約に盛り込むことができる。
さらにガイドラインに適合した契約を裁判規範として尊重するように制度化する。
これによって、起業したばかりの企業がスタートアップに必要な人材を雇い入れたり、外国企業が日本市場に参入しやすくなったり、数年間のプロジェクトのために専門人材を雇い入れることができるようになる。
現状では、企業は雇った人材を解雇しにくいため、こうした専門的な人材を期間を定めて雇用しにくい。
この雇用特区に関して、例えば朝日新聞は「例えば「遅刻をすれば解雇」と約束し、実際に遅刻したら解雇できる」などと書いているが、そもそも、それは公序良俗に違反しているだろうし、特区が定めるガイドライン違反になるだろう。
また、「解雇のルールを明確にすれば、新産業の育成や海外企業の活動がすすむという考えからだ。だが、強い立場の企業が、弱い労働者に不利な条件を強要して雇用が不安定になるおそれがある。」とも朝日新聞は書いているが、限定された専門的な人材が対象であり、こうした人材がそもそも「弱い立場の労働者」だろうか。
フィナンシャルタイムズは「日本の労働法では正規職員の解雇はほぼ不可能。企業は非正規職員をますます雇用し、エコノミストが『二重労働市場』と呼ぶ状況を生み出している。」と書いている。
「非正規職員は正規職員よりも賃金が低く、年金受給の恩恵を受けにくい。二重労働市場では能力ではなく年齢によって正規職に就く人材が決まる。数か月しか勤務しない職員を企業が教育する理由はまずない。これでは生産性は低下してしまう。」とフィナンシャルタイムズは続ける。
朝日新聞とフィナンシャルタイムズのどちらが、日本の成長戦略を真剣に考えているだろうか。



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