子どもの通学から日米の違いを考える

2013.04.07

ニューヨーク出張48時間。
ランチ、ディナー、カンファレンス、ディナー、朝食会。時差ぼけがひどかったが、直すと帰国してからがまた大変なので、眠いのを我慢する。
滞在中に出席した米日財団の理事会で検討した今年度に米日財団が助成するプログラムの一つに、バージニア大学の「The Slow Way Home」というドキュメンタリーがある。
これまで全く考えたこともなかった視点で日米の通学方法を比べようというものだ。非常におもしろい。
1960年代まで、日本でもアメリカでもほとんどの子どもは歩いて小学校、初等学校に通っていた。
しかし、その後の50年間に、アメリカの子どもたちは歩いて初等学校に通わなくなった。最近の調査では、47%の子どもは自家用車で学校まで送られ、40%の子どもたちはスクールバスで学校まで通ってくる。わずかにアメリカの子どもの12%だけが徒歩又は自転車で通学している。
しかし、日本では今でも98%の小学生が徒歩で通学している。
この違いがどこから来たかを社会的、人種的、環境的に説明しようというのがこのドキュメンタリーの狙いだ。
日本ではどこの家庭からでも子どもが5km歩けば小学校に通えるように学区が整備される一方で、スクールバスはコストがかかりすぎると導入されてこなかった。日本では親が自家用車で送り迎えするのは禁止され、安全な「通学路」が定められるようになった。
アメリカでは早くからスクールバスの導入が進み、そのため小学校が住宅地から離れたところでも建設されるようになった。むしろその方が送迎のための大きな車寄せや大きな運動場を造ることができて好ましいとさえ思われるようになった。
1960年代に入り、アメリカでのその傾向はさらにいっそう進んだ。
南部から北部の大都市に多くの黒人が移り住むようになった。アメリカでは中古の住宅市場が成立していたので、白人の多くは都市の中心部の家を売り、新しく開発されつつあった郊外に移り住むようになった。そこでは急速に増える子どものために新しい学校が次々と建てられたが、もはや初等学校でさえ歩いて通学することを前提に建設されなかった。
また、人種差別問題に対する裁判所の判決などがあり、地域によって住んでいる人種が違う都市であっても、子どもたちが地域を越えて同じ学校に通うようにとスクールバスで送り迎えをすることが始められ、ますます徒歩通学は難しくなった。
日本では、住宅市場が発達せず(日本の中古住宅の市場は、人口比でアメリカの20分の1にしかならない)、経済的に豊かになっても地域を移動するよりも、その場所で新しい家を建て直すということが普通に行われた。そのため、日本では地域コミュニティの出入りが比較的少なく、安定している。
そのため日本では、地域内に見知らぬ人が少なく、親が安心して子どもを徒歩で通学させることができ、徒歩で通学する子どもたちも地域コミュニティの一員となっていった。(自動車で送り迎えされる子どもたちは、その間の地域コミュニティを通り過ぎていくだけで地域とは関わりを持てない)
1979年からアメリカでは通学中の子どもが誘拐される事件が次々と起きた。それに対して、アメリカ人の親は「個人的な」選択で対応した。
アメリカの親には、子どもをスクールバスで通わせる、自家用車で送り迎えする、公立学校から私立学校に転校させる、比較的安全な地域に移り住むといったいくつかの選択があった。
それに比べて日本の親がとれる「個人的な」選択は少なかった。ほとんどの公立学校ではスクールバスは運行されておらず、自家用車での送迎は禁止されており、ほとんどの親にとっては、子どもの学校のために引っ越すというのはあまり現実的ではなかった。
その結果、日本の親は現状の通学路をより安全にするために「地域で」動いた。通学路で子どもを見守るボランティアが増え、集団での登下校が行われるようになった。
アメリカでは両親が子どもを学校に送り迎えするために、仕事や家庭生活に大きな制約ができることになった。ほとんどの家庭がこうした「個人的な」選択をした結果、自律的な地域コミュニティの発展が進まなくなった。また、自家用車やスクールバスで送り迎えされる子どもたちは自分が住んでいる地域との関わりが薄くならざるをえない。また、歩かないことで子どもたちの健康にも肥満をはじめとする問題が出ている。
このドキュメンタリーは、アメリカの親たちが、スクールバスや自家用車で送迎される子どもたちの問題に気がついて、子どもを徒歩で学校に通わせようとしても地域からのサポートが得られない現状を描き、日本の地域コミュニティから学ぶことがあるのではないかと問題提起をしようとしている。
1時間もののドキュメンタリーになる予定だ。



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