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読売新聞の不可解
2012.05.18
IAEAの基本安全原則には、
「規制機関は、以下を満たさなければならない。(中略)
利害関係者から不当な圧力を受けることがないように、許認可取得者及びその他の全ての機関から実質的に独立であること。」
とある。
また、IAEAの安全要件では、
「規制機関は、変化する政治環境又は経済条件に関係する圧力、あるいは、政府各部門又は他の組織からの圧力のような、安全を損なう可能性のあるいかなる不当な影響にも左右されないで、独立した規制判断と決定がなされなければならない。
さらに、規制機関は、施設及び活動の安全に関連した事項について、政府各部門及び政府機関に対して独立した助言を与えられなければならない。」
と定めている。
つまり、IAEAは、原子力発電所の事故などのような災害対応では、オンサイト、つまり事故の起きた敷地内における原子炉の事故対応に関しては、スリーマイルアイランド事故におけるカーター大統領や福島第一原発における菅首相のような、政治的な介入があってはいけないと言っているのだ。
もちろん、オフサイト、つまり敷地外の避難や警察や自衛隊の出動要請その他、諸々の対応については、規制組織ではなく、総理を本部長とする災害対策本部が責任を負い、規制組織とも確実に調整しながら、対応を実施する。
そして、IAEAは、平時でも非常時でも規制組織が政治的圧力から独立していることを求めている。
5月17日付の読売新聞の社説は、次のように書いている。
「政府案の規制庁は、環境相が任命する規制庁長官がトップに立つ仕組みだが、自公両党は、それでは原発を推進する経産省や政治の圧力に抗することが出来ない、と批判してきた。
自公案は、重大事故時でも、原子炉の制御などに関する措置は原子力規制委が担うとしており、首相の指示さえ排除している。
だが、原子力規制委が非常時に迅速な意思決定が可能か疑問だ。独立性を重視する余り、危機対応に支障が生じてはならない。
野田首相が自公案について「よく吟味しなければいけない部分がいっぱいある」との懸念を示したのは、もっともだ。
政府案のように、原子力災害対策本部長の首相が、規制庁を含む各府省に指示し、電力会社にも関与できる方が妥当だろう。平時の防災対策や避難訓練に必要な自治体との連携も容易だ。」
これは、残念ながら、IAEAの求めている条件を全く理解していない意見である。過去、IAEAがどのような議論をしてきたのか、今の日本の規制組織の何が問題なのか、福島の事故の対応で、どういう問題が起きたのか、きちんと理解した上で、IAEAが各国に求めているルールを理解した上で、社説を書いてほしい。
さらに、IAEAが、「...『経済条件に関係する圧力』、あるいは、政府各部門又は他の組織からの圧力のような、安全を損なう可能性のあるいかなる不当な影響にも左右されないで、独立した規制判断と決定がなされなければならない。」と明記しているにもかかわらず、現在の民主党政権は、「今夏の電力が足らなくなるから再稼働」というような「経済条件に関係する圧力」をかけて再稼働の判断をしようとしている。
これもIAEAが求めている安全ルールから著しく逸脱している。
政府の猛省を求める。