原子力時代の終焉 トルコエネルギーフォーラムから

2011.11.21

第8回トルコエネルギーフォーラム。原子力、再生可能エネルギーと石油の三つの分科会にわかれる。

原子力の分科会の議論はおもしろかった。
問い:福島の事故は「原子力ルネッサンス」にどういう影響を与えたのか。
答え:何も影響していない。なぜなら、福島の事故がなくとも原子力ルネッサンスなんかとっくに終わっていた。

原子炉の建設は確実に減りつつあり、建設されている原子炉も非常に偏った国々に限られている。

1989年に世界中の原子炉の数は424だった。2002年に原子炉の数は最多の444まで増えたが、その後減り始め、2011年には427まで減った。

2008年以降建設が始まった原子炉は世界中で40基。そのうち25基は中国、6基はロシア、この2カ国で新設の4分の3を占めていて、さらに韓国とインドが3基ずつ、この4カ国で37基、9割以上だ。

この新規原子炉の供給元企業を国別にみると、中国が20基、ロシアが6基、韓国とインドが3基ずつ。

原子炉は、すでに新興国企業が新興国市場に供給するものになりつつある。

日本の原子炉メーカーはこうした世界市場の中で、競争ができるのかという質問が多く飛んだ。

新興国市場のなかで、中国やロシアの低コストにまともにぶつかって競争になるのか、スペアパーツの保管やメンテナンスを継続して赤字にならないのか等々。

また、安全審査に関して、中国、ロシアの原子炉の安全審査について、本当にオープンな審査ができるのかという疑問が投げかけられた。

残念ながら、日本の安全規制についても、まともに行われているのかわからないという指摘がされた。当然のことだろう。

さらにその中で原子炉建設のコストは上がりつつある。

アメリカの原子炉の建設コストはkWあたり2008年価値のドルに換算して、1973年の実績では1000ドル以下だったのが、2009年には新設の推計コストが7000ドルを超えた。

切り札となるはずだった第3世代プラスとよばれる新型原子炉も問題を抱えている。

kWあたり$1000以下になるはずだった建設コスト見込みは、現時点で$6000を下回ることはない。今後、さらに上がることは予想される。

AREVAが建設中のフィンランドのオルキルオト3号機は、2001年には建設コストが25億ユーロ、建設期間4年という計画だったのが、最近では60億ユーロ、9年といわれている。

2005年8月 オルキルト3号機建設開始
2006年   予定より18ヶ月遅れ
2007年   予定より24ヶ月遅れ
2008年   予定より36ヶ月以上遅れ
2010年   予定より42ヶ月以上遅れ
2011年   予定より54ヶ月遅れ

フランスのフラマンビル原子力発電所は、33億ユーロで5年の建設計画が、コストが2倍で建設にやはり9年間という見込みになってきた。

オルキルオトの現実があり、さらに福島の事故で安全規制が強化されるようになると、もはや原子炉の建設にターンキー契約などできなくなっている。

この結果、原子力関連企業の経営は悪化しつつある。

フランスのAREVAは、2007年から時価総額を72%減少させた。フランス政府の保証がないAREVAの格付けはジャンクボンド扱い。同じフランスの原子力関連企業EDFは、2007年から今日まで時価総額が78%減少した。

シーメンスは原子力の分野から撤退を決めた。

アメリカで原子力発電所を運営する48の電力会社のうち、40社は格付けが下がり、その他変更なしが6社、格付けが上がったのはわずか2社に過ぎない。

原子炉建設のための日本政府のファイナンスが納税者につけ回しになるのではないか、日本の納税者はそのリスクを受け入れるのか等々の質問が出る。

世界中の原子炉を経過年数ごとに並べると、最も多いのが26年目の原子炉で38基。40年以上経過した原子炉は21基、40年が9基、41年が6基、42年が4基、43年が最長で2基(2011年4月1日現在)。

運転が停止された原子炉は何基もあるが、廃炉費用については未だに不明な点が多い。

それに比べて新エネルギーへの投資は世界的に急増している。

世界的なクリーンエネルギーへの新しい投資は、
2004年  517億ドル
2005年  763億ドル
2006年 1129億ドル
2007年 1508億ドル
2008年 1801億ドル
2009年 1865億ドル
2010年 2430億ドル
と平均して年率29%伸びている。

2010年には、中国1カ国で540億ドルを投資。これは2004年に世界全体で投資された金額よりも多い。

2000年から2010年の間にヨーロッパにおけるエネルギー別の導入量は
天然ガス  118GW
風力     74GW
太陽光    26GW
大規模水力   3GW
バイオマス   3GW
ゴミ発電    2GW
小水力    0.2GW
地熱     0.1GW
原子力    -8GW
石炭    -10GW
石油    -13GW

2011年から2025年の間にヨーロッパで見込まれる投資額は2011年のKPMGの「保守的な推計」で
      設備容量   投資金額
原子力    0GW     0
石炭   126GW  2010億ユーロ
天然ガス 122GW   978億ユーロ
石油     2GW    17億ユーロ
風力   107GW  1496億ユーロ
太陽光   24GW  1212億ユーロ
その他自然 21GW   736億ユーロ
大規模水力 35GW   886億ユーロ

それに比べて、日本では、野田政権が発表した再生可能エネルギーの固定価格買取制度の調達価格等算定委員会のメンバーが発表されたが、野田政権の再生可能エネルギーに対するやる気のなさが際立っている。

かつて電力会社と経産省の提灯持ちをして2000年の新エネ法をつぶし、RPSなどという糞の役にも立たない制度の導入の後押しをした主犯格2人をメンバーに入れた。民主党政権は、まだ、電力会社の労組に遠慮して再生可能エネルギーつぶしをやろうとしている。

さらに世界ではスマートグリッドの開発競争が熾烈になっている。

2011年8月8日にボーイングとシーメンスはマイクログリッド開発のための戦略的な提携を発表。2009年からGEはカリフォルニアの海兵隊基地でスマートグリッドの実験を開始。ワールプールは2015年に全ての白物家電をスマートグリッド対応に。

日本は依然として電力会社が邪魔をしてスマートグリッドの開発がまともに進まない。このままでは世界の流れから置き去りにされてしまう。

海外に出て議論すると、いつも日本のエネルギー政策の過ちと電力会社を中心とする夢を忘れられない原子力関連産業のひどさを思い知る。

日本の電力産業を普通の産業に戻そう。



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