日本ヨルダン原子力協定の愚

2011.08.24

外務委員会で日本・ヨルダン原子力協定。今日は参考人招致。

日本・ヨルダン原子力協定は、民主党政権が昨年9月に署名して、国会に批准を求めた。

ヨルダンの原発建設は、三菱重工がアレバと組み、国際入札に参加しているが、他にロシアとカナダが参加して、三者競合の状況になっている。

しかし、今日出席した環境・持続社会研究センター理事の発言にもあるように、このヨルダンの原発は問題が大きい。

まず、原発建設予定地であるマジダルは、内陸の乾燥地帯。ザルカ川という小さな川があるだけで、慢性的な水不足の地域。そのため冷却水は近隣にあるキルベット・アル・サムラ下水処理場から水を引いた貯水池を作り、その水を使う。

下水処理場の水を使って冷却する原発は、アメリカのアリゾナ州に一つあるそうだが、貯水池の水は15日分だという。

はたして、ヨルダン原発は、その貯水池で、冷却水の手当てが大丈夫なのか。非常時には、近くの小さなダムから水をポンプアップして引いてくることになっているが、ダムが低く、ポンプアップが必要で、電力が止まれば水は引けない。

こうした冷却水のインフラは、みんなヨルダン側がやることになっているというが、失敗したODAの言い訳に最も使われるのが、相手側が担当することになっていた部分がきちんとできなかった、というものだ。

ヨルダンは地震国のため、基本的に核廃棄物の最終処分には適さないということを、今日の参考人招致で、推進側の参考人も認めている。使用済み核燃料を50年から100年、中間貯蔵するということになっているが、その後については誰も何も言えない。

ヨルダンには地震リスクがあり、下水処理場の破損や停電が起きれば冷却水を供給できなくなるリスクがある。もちろん原発本体への影響もあり得る。

2010年4月と8月にヨルダン国内でロケット弾を使ったテロが起きている。ヨルダン周辺は安定しているとは言い難い状況で、日本と違ってテロ対策が現実に重要だ。

ヨルダンの政府財政は深刻な状況にあり、対外的な債務残高は2009年末で約5000億円。二基の原子力のコストは約一兆円になるから、対外債務は一気に倍以上になる。

GDPが二兆円を上回るレベルの経済規模だから、このプロジェクトは、GDPの半分の大きさに匹敵する。

日本から過去に、財務支援をしたこともある。外務省のサイトでも「都市・地方間の所得格差、高い水準で推移する貧困率・失業率、慢性的な財政ギャップなど構造的な問題を抱え、依然として外国からの資金援助、地域の治安情勢、外国からの短期的な資本流入の動向等に左右されやすい脆弱性がある」という記述があり、原発建設には財務リスクが高い。

原発予定地は、ヨルダンの工場の半分近くが立地するヨルダン第二の都市、ザルカから15kmに位置しており、ザルカ川はヨルダン川に合流し、下流には果物や野菜の生産地であるヨルダン渓谷の灌漑地帯が広がる。もし何かあれば、ヨルダン経済への影響は計り知れない。

こうした問題点を知ってか知らずか、民主党政権は国際入札が進んでいるから早く条約を批准しろといってくる。そういうわけにはいかない。金曜日の外務委員会採決は白紙だ。



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