原発の再稼働はできるか

2011.06.14

定期点検で停止した原発の再稼働が、今後、問題になってくる。

再稼働は、そう簡単ではない。

まず、国が事故を踏まえて厳しい安全基準を策定する。原子力安全委員会や保安院は、どう考えているのだろうか。やる気があるのだろうか。

そして、再稼働させようとする原発に関しては、ストレステストを行って、合格したものだけが再稼働の対象となる。

複数の専門家から、実は政府は原子炉ごとにリスクを計算して数値化したものを持っていると聞いた。そうしたものも全て公開すべきだ。

再稼働の条件はハードウェアだけではない。

NHKの水野倫之解説委員や山崎淑行記者らは、最近出版された本の中で「先輩の記者には、『彼ら(電力業界)のいうことは信じるな』と指導されたものです」と述べている。

これが原発に関して何らかの情報をとろうとしたことがある関係者の共通した感覚だろう。まず可能な限り情報を出さない、そしてやむを得ない場合でも国民に理解されるようには情報を出さないということをやってきたのが電力業界と経産省だ。

再稼働には、まず、彼らの信頼回復が先立つ条件のはずだ。そのためには経産省幹部、電力会社の経営陣の総退陣が必要だ。これを求めずして再稼働を認めるような首長に、その地域の行政を司ることは許されない。なぜならば、信頼できない情報をベースに地域住民に何をどう説明しようというのか。

信頼性の次は能力だ。水野倫之氏は著書の中で「政府や東京電力のコメントを聞くと、『まずくはなかった』とか、『ベストを尽くした』という言い方をしているんですけれど、はっきり言って、ベストを尽くしてレベル7ですかと。」

原子力村の住民たちの能力がその程度のものだとするならば、とても怖くて再稼働に合意できないだろう。

さらに、事故が起きてから、五分間だけの会議を開催して責任を果たしたことにしている原子力安全委員会や、東電が事故の処理をする時に安全基準を守っているかどうかを確かめるのが我々の仕事だと言い放った保安院(そうだとすると、事故の処理に当たった作業員が被曝しているのは保安院のミスだといわざるを得ない)、管理しているはずのオフサイトセンターが全く機能しなかった独立行政法人など、鍛え直す必要がある組織がてんこもりだ。

水野解説委員は、オフサイトセンターについて、「指揮、情報を一元化した現地対策本部の拠点になるというオフサイトセンター設置の最大の目的は事件発生当初から果たされていなかったわけです」と指摘している。

さらに、「『最悪の事態を想定する』のは、日本の原発推進の関係者にとっては最も苦手なことではないかと思います」と、日本の原発事故の訓練が、書かれたシナリオを舞台稽古のように読み上げていくだけの全く役に立たない訓練だと指摘している。

「『電源喪失しました』...と読み上げられても、しばらくすると『ただいま電源が回復しました』...となって次に進む。電源回復の理由はシナリオには特に触れられていないので、『わからない』ままなのです」

これで、再稼働させるのか。

能力のある人間を外国からでも連れてきて、職員や関係者をしっかりと訓練し、オフサイトセンターその他の施設をきちんと完備した上で、再稼働するかどうかを議論すべきではないか。

首長に頼んで再稼働を認めてもらうという従前の安易な考えでは、原子力の安全は確保できない。首長が、きちんと住民の安全を確保できるかどうか、判断しているのか、国となあなあで再稼働を認めようとしているのか、しっかりと首長の判断を見ていかなければならない。



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