ダボスの総理演説

2011.01.30

中近東の政権は、みんな正統性というアキレス腱を抱えている。

例えばレバノンは、各宗派が人口に応じて大統領、首相、国会議長といった役職を分け合っているが、かつて最も人口が多かったマロン派キリスト教徒とスンニ派のイスラム教徒の人口は既に逆転したと見られている。しかし、レバノンではこの数十年、国勢調査が行われていないため、役職の割り振りの見直しは行われていない。

シリアは、人口の約一割のアラウィ派出身のアサド大統領とアラウィ派が多数を占めるスンニ派他の民族を力で押さえつけている。

バーレーンでは、スンニ派の首長がシーア派が多数を占める国民を統治している。

サウジアラビアは、イスラムの中でも最も厳格なワッハーブ派を国教としているのに親米路線を取っていることに対して、宗教的な保守派から王家が批判されている。

ヨルダンは、伝統あるハシム家を王に抱くが、かつてパレスチナ難民が大量に流入し、ヨルダンを優先しようとする王家とパレスチナ復活を優先しようとするPLOの間で軋轢が生じ、黒い9月事件を引き起こした。

チュニジアとエジプトは、どちらもイスラム民族主義政党を非合法化することにより保守的なイスラム教徒から批判され、なおかつ独裁政権が長く続くことにより、民主派からも批判されてきた。

チュニジアの革命は、同じような正統性の問題を抱えるエジプトに飛び火し、この火種はさらに中近東、どこの政権にも飛び火しかねない。

今、日本が取るべきは、まず、ヨルダンに対する大型の経済支援を明確に打ち出すことだ。ヨルダン国王のこれまでの努力は評価できるだろう、しかし、石油のないヨルダンは常に財政的、経済的な危機に直面している。そして、ヨルダン国王は極めて親日的だ。

もし、日本が中東和平にさらに深くコミットしようとすれば、日本単独ではなく中東のどこかの国と組んで中東問題に入るべきだ。イスラエルとも関係のあるヨルダンは、日本のパートナーとしてうってつけだ。だから、日本はヨルダンに対する経済支援を打ち出し、国王を助けるべきだ。

さらに、チュニジアやエジプトにこれから生まれるであろう非親米民主政権に対する支援を明確に打ち出すべきだ。特にエジプトではムバラク政権への反動で、後継の政府はアメリカべったりというわけにはいかない。そうした政権に対して、日本がコミットしていくことで、地域の安定を取り戻すことができる。

武器輸出もせず、植民地支配の歴史もない、そしてキリスト教でもイスラム教でもユダヤ教でもない、しかし、基本的人権を尊重する民主国家であり、経済的にも発展を遂げた日本がきちんと新政権をバックアップすることで、地域が不安定化することを防げる。

大使館員が大使館から出ることすらできないアフガニスタンで多額の支援を行うよりも、むしろ中近東できちんと経済支援をすることが中近東の石油に依存する日本の果たすべき役割ではないか。

もし、ダボスに行ったのが河野太郎総理だったら、そういう演説をした。



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