強行採決と民主主義の危機
2010.05.29
普天間問題の陰で、郵政法案が強行採決された。
もともと小泉内閣の時に、莫大な審議時間をかけ、解散、総選挙までやって決めた改革をわずか数時間の採決でひっくり返した。
数日前までは、与野党の国対間で、この法案はこの国会ではやらないということになっていた。とても審議時間が足りないからできないという認識は一致していた。
ところが小沢一郎幹事長が郵便局長さんを相手に一言言ったとたんに、民主党はしゃにむに強行採決だ。
僕がまだ、当選一回の時、やはり強行採決があった。委員会の控え室に一回生が動員されて詰めかけると、当時の野党の先輩議員が、控え室で、ほら自民党の若いのが先に並ばなきゃ、君たちが先に出ていって委員長を守る、マイクも守れよ、野党は後ろから、声はいくらでも大声出していいけれど、ケガしたり、ケガさせたりということがないようにやるんだよ、エキサイトしてたたいたり、蹴ったりしちゃいかんぞ、と事細かに注意していた。
自民党時代の強行採決は、その前に必ず相当な審議時間があり、参考人招致などもやり、その上で、野党としては立場上、採決に応じられないので強行採決でやってくれというやりとりがあっての強行採決だった。決してほめられたことではないが、与野党の意思はそれなりに通じていた。
しかも、いい加減にやると、議長が本会議のボタンを押さないという心配もあった。だから本会議に少なくとも共産党は出席するという状態を作り出さなくてはならなかった。
たしかに多数決をやれば、多数が勝つわけだが、少数意見を常に踏みにじることをしてはいけないという自制があり、国会の慣例があった。
時間がかかるというのは民主主義のコストだ、そこは丁寧にやらねばいかんというのが与野党共通の認識だった。
これを崩したのは、小沢-山岡のラインだ。数がすべてという国会運営になった。
自民党の時は、少なくともこれだけの審議時間を確保するとか、委員長が職権で会議をたてる前に、筆頭間協議を何回もやり、理事懇と理事会を丁寧にやった。
僕が法務副大臣だったときの法務委員会は委員会よりも理事懇、理事会のほうが長いなんてざらにあった。そして、さあいよいよ強行採決というときに、自民党の幹事長が議長に呼ばれ、強行採決はまかりならん。
今や、委員会の審議が1日でも強行採決。委員長が職権で2日分の委員会をたてるということを平気でやる。議長は、なにもしない。これでは発展途上国の軍事政権の国会運営ではないか。
自民党もやってきたでは済まされない。
全く内容が違う強行採決だ。日本の民主主義の危機だ。
福島罷免よりも近藤昭一委員長の横暴、もちろん、小沢、山岡の指示の下ではあるが、のほうが罪は重い。
民主党の中にも藤村前厚労委員長のように、強行採決に反対し、更迭された委員長もいる。体調を理由に辞任したことになっているがそれは嘘で、強行採決に反対して解任されてしまったのだ。
福島党首も沖縄のことであんなにかっこいいことを言うならば、国会の強行採決のことでもっと発言するべきだった。
マスコミも、普天間基地もいいが、国会運営に関して国民にきちんと報道していかないと、ヒトラーが政権についたときにようになりかねない。
だからやはり、参議院はきっちりとねじれさせないと。