ODAを半減せよ

2009.02.09

オバマ大統領の就任式に参加した僕の友人が、ガイトナー新財務長官(当時はまだ予定者)に会ったら、なぜ、天下りした人が天下り先を変えることを「わたり」というのか、と彼に聞かれたそうだ。
ガイトナー財務長官いわく、天から降りてきた人なんだから、ちゃんと敬語で「おわたり」と言わなきゃ。

ジョン・ル・カレのジョージ・スマイリー三部作の中で、スマイリーは、ささいなところからカーラを追い詰める手がかりを得る。
我が無駄遣い撲滅プロジェクトチームもようやくその手がかりをフィリピンで発見した。

フィリピン向けの無償資金協力の中に、「地方都市水質改善計画」というものがある。ルソン島をはじめいくつかの島の水道区に浄水場を作るというもの。

2004年10月と2005年3月の二期に分けて、合計七か所で事業が行われた。しかし、そのうち三か所で、事業が頓挫してしまった。

バナイ島のパニタン水道区では、2004年10月に完工したものの、2007年4月に水道区が統廃合されて運転停止。同じく2004年10月に完工したディングル・ポトタン水道区ではその年の末に配水管が老朽化し、運転を停止した。
さらにルソン島のリンガエン水道区では2005年3月に完工したものの、2007年3月に配水管の老朽化により運転停止に追い込まれた。

水道区の統廃合や配水管の老朽化などは当然に、事業開始前にわかっているはずである。調査、計画をした段階で当然に計画に反映され、事業から外されるべきであったのに、工事が行われ二年足らずで運転停止になった。

ところが同じルソン島のパグサンハン水道区にODA民間モニターが連れて行かれて、視察の報告をしている。リンガエン水道区には行っていない。運転しているところには連れて行くが、運転停止中のプロジェクトには連れて行かないと言うのでは、なんのためのモニターなのか(民間モニターは河野チームで予算をつけるべきでないと廃止を勧告している)。

さらに最大の問題は、これらのいかがわしい事業の評価も報告もなにもないことだ。ODAが失敗し、税金がどぶに捨てられたというのに、外務省は今日まで、全く無反応なのだ。

数週間にわたり、この事業の評価を見せてほしいと頼んでいるにもかかわらず、毎回、はじめてその要求を聞いたことにされる。
初めて要求を聞いたとしても、これだけ問題の大きい事業だから、報告書や評価書や対策や原因などの究明がすぐに出てくるかと思いきや、どうも外務省はなにもしていないようだ。

文化無償で贈られた機材が劇場の倉庫の中で梱包も解かれないまま何年も眠っていたというチョコナイ劇場のケースなど明らかに失敗したODAプロジェクトが何のフォローもなくほったらかしにされていたケースがこれまでにもたくさんある。
今回も全く同じだ。

去年の政策棚卸しから、河野チームの主張は一貫している。
つまり、現在の外務省は、これだけのODA予算を的確に使いこなすことができないのだ。
外務省や森喜朗代議士のような「外交族」議員は、外交力を向上させるためにODAを増やせと主張する。が、その主張はインチキなのだ。
今の外務省の能力では、今のODA予算をこなしきれないのだ。だから事業のレビューもなく、その効果も測定されない。失敗したものの原因も究明しようとさえしていない。

消耗品や部品がなくなっただけで動かなくなった機械がどれだけあるか(ソニーが自腹を切って修理をして下さったおかげで、文化無償のかなりの部分が助かっている)。
PAL方式のテレビ放送をしている国にNTSC方式の機械を贈っているのにビデオに使うのだから大丈夫と強弁してみたり、コンテンツを作る金がない国にハードだけ無償で提供してみたり。
住民を正当な補償もなく強制移住させているのに知らん顔をしていたり。
こうした失敗がなぜ起きたのか、なにも原因究明がない。

外務省の会計課長は政策棚卸しの時から変わってしまった。また一から議論をやり直さなくてはならない。
ODA予算は大幅に減額しなければならない。おそらく、まず、半減することが必要だ。半減の半分は国庫に戻し、半分で外務省の足腰を強化し、札ビラに頼らずにきちんと外交ができる能力を身につけなければならない。
外交力がないからカネにものを言わせるしかないのだ。外交力があれば、カネに頼らない外交ができるはずだ。外交力を増やすというならば、ODAを減らすべきだ。

ODAの失敗はこれだけではない。いったい外務省は失敗したODAのうち、いくつまで把握しているだろうか。

日曜の夜十時、山本一太さんと二人で来日中の韓国のソン・ヨンギル議員と会う。今や民主党のソン・ヨンギル、ハンナラ党のウォン・ヒーリョンの二人が韓国の政治を引っ張る新世代のリーダーになってきた。日本の総選挙が終わったら、四人でまたプロジェクトをやることを約束して別れた。



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