2002年12月9日号
2002.12.09
日米間の誤解というか文化の違いが時として、問題になる。
11月14日に隠岐諸島西方の排他的経済水域で米海軍の水中爆破訓練があった。これに関して、沿岸の関係者から猛烈なクレームが出された。いったい、何が、なぜ起きたのか。
米海軍の水中爆破訓練は、小規模な爆発を水中で起こして行う訓練で、今年に入って八回程度、日本近海で行われている。
手順としては、米海軍が訓練を実施するおおざっぱな水域を決め、米国国家画像地図庁からHYDROPAC(米国航行警報)を出し、この水域でいつ訓練をする予定という情報を流す。
ただし、公海上で、米海軍が、ここで訓練をやるからみんな、どけっ、ということはできないので、米海軍は、水域の中で、回りに誰もいないことを確かめて、安全を確保して、訓練を実施する。
11月15日には奄美大島周辺で、12月6日には沖縄沖で、同様の手順で訓練が実施されている。
11月14日の隠岐沖は、かに漁の真っ盛り。かに漁をしている漁船は、米海軍など無視して漁をする当然の権利があるし、米海軍も当然そのことを認識している。しかし、問題は、海上保安庁がHYDROPACを訳して発出した日本航行警報を見て、関係者がびっくりし、漁ができないと思ったこと(そりゃ、米軍の爆破訓練が近くであると言われれば、誰だってビビる)。
で、こんな訓練されたら出漁できないと、島根県庁をはじめ、関係者からの猛烈な抗議になった。
抗議を受けた米海軍は、やはり驚く。いやいや、そちらは思うままに漁をしていただいて結構です。うちは邪魔にならないように、誰もいないところでやらせていただきますので。ルール通りにやっているのに、何でこんなことになったのか、わからない。
国際的には、海上保安庁はこうした状況を知っていれば、5日前までに航行警報を発令する義務がある。しかし、国際法的には、米海軍には、この訓練情報を5日前に通報しなければならない義務はないらしい。
全てルール通りにやっていますという米国とルールはルールだが、一言言ってくれれば、問題が起きないのにという日本。
関係者に一言言っておけば、という考えと、これは公海上の航行の自由のルールの問題だという原則論。
水産庁も海上保安庁も、結局、この問題は外務省の問題だから、手は出せません。川口さん頑張ってね、ということになっている。
イージス艦を出して、アーミテージさんに褒められるのも良いが、こういう小さな誤解をきちんと処理していくのも日米間にとっては大事だ。特に気になるのは、マスコミによるこの問題の報道ぶりのなかに、かなり誤解に基づいていたものがあったこと。外務省が、事実関係をはっきりと認識し、マスコミに流していれば、もう少し正しい報道がなされ、真の問題点は何だったか、明確になっていたはずだ。
大切な同盟国というならば、そこのところもきちんと気を遣う必要がある。あの記事だけで終わった人たちには、アメリカはけしからんと思ったままの人がずいぶんいるはずだ。
外務省の考えは、マスコミはいい加減なことを書く。だから、何も言わないのが最良のマスコミ対応だ。これではいつまで経ってもマスコミは進歩せず、国民もマスコミの記事をどう扱うかというメディアリテラシーが向上しない。
イラク新法やイージス艦だけでなく、もう少し細やかな対応をすることで、いらぬ誤解も解け、同盟に対する理解も深まる。
米軍の問題はきちんと指摘し、そうでないときはきちんと説明してあげることが必要だ。指摘はしないで地位協定の改定は避け、説明すべき時に一緒になって非難しているようではいけない。