おすすめの一冊「危機に三十年」

2026.03.30

おすすめの一冊
「危機の三十年」 細谷雄一著 新潮選書

サブタイトルに「冷戦後秩序はなぜ崩壊したか」とあるように、冷戦後からロシアのウクライナ侵略まで、米ロ間でなにがあったか、ヨーロッパはどう動いたのか、ウクライナが独立した1991年12月から2022年2月24日のウクライナ侵略までの30年間をそれぞれ西側とロシア側からみるとどうだったのかを描いています。

第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の二十年間に、戦勝国のユートピア的な理想主義こそが国際秩序を揺るがして次の大戦に繋がってしまったと説くイギリスの歴史家E.H.カーの古典「危機の二十年」を現在に置き換えると、まさに冷戦後の理想主義が権威主義の国、とくにロシアを追い詰めていったのだと解説します。

西側が自明のものと思っている民主主義、新自由主義はロシアや中国から見れば自らの勢力圏に対する脅威であり、挑戦だととらえられており、ナポレオンのフランス、大戦やベトナム戦争などのアメリカ、冷戦のソ連など、自らが信ずるイデオロギーを広めようとした過去の理想主義の試みは、それを支える十分なリアリズムが欠けていたと著者は指摘しています。

「政治学が対象とする事実は、これを変えたいと思えば変えることができる事実なのである」というカーの言葉が冒頭に引用されていますが、これからの世の中をユートピア主義とリアリズムを融合することで、よくすることができるでしょうか。

カーの「危機の二十年」はもちろん、サロッティの「1インチの攻防」などとあわせてお読みください。



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