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消費税の税率を変える
2025.05.13
参議院選挙が近くなり、さまざまなところから物価高対策や経済対策として消費税の軽減税率の引き下げなど減税を訴える声が出てきています。
中には物価高対策として軽減税率を一旦引き下げ、短期間で元に戻すなどという案もあります。
しかし、消費税の引き下げは、消費の多い、つまり収入の多い世帯にとって優遇が大きくなり、物価高対策としては公平な政策とは言えません。
また、消費税の税率変更には手間がかかります。今日決めて、来週や来月に税率が変更できるわけではありません。
軽減税率を変更する場合に限っても大変です。
まず、値札の張替えと小売店のレジの変更が必要になるのはすぐおわかりだと思います。
それに加えて、商品の売れ行きなどの情報を分析するためのPOSレジを使用しているコンビニ、ドラッグストア、スーパー、デパート等では、それぞれの企業が独自のシステムを構築しているので、システム変更が必要です。
さらに軽減税率を伴う商品の商取引をする企業の受発注システムや会計、支払いのシステムにも変更が必要になります。
食料品は、店内で消費すると10%、テイクアウトだと8%ですが、大手のチェーン店の中にはこの2%差を飲み込んで税込価格を統一している場合もあります。
しかし、仮に軽減税率が0%になると、標準税率10%との差が大きくなり、値段設定を分ける事が必要になってくるでしょう。
また、イートインが10%、テイクアウトが0%となると、コンビニなどの店頭での確認を、今まで以上に丁寧にする必要が出てきます。
10%が適用されるレストランなどの外食と、0%のコンビニ、スーパーのお惣菜やお弁当との税率差が大きくなり、外食産業への影響も出るでしょうし、税率引き下げが決まると、飲料品やレトルト、缶詰など保存のできる加工食品の買い控えが発生します。
軽減税率を元に戻すときには、引き上げ前の買いだめとその反動による売上減が続きます。
軽減税率を0%とすると、原材料を標準税率(10%)で仕入れて、商品を軽減税率(0%)で販売する事業者は、仕入れ時に支払う消費税が変わらない一方、売上げ時に消費税を受け取れず、仕入れ時に支払った消費税は、消費税を申告して還付をうけるまで回収することができないため、資金繰りに影響が出てきます。
こうしたことを考えると、消費税の軽減税率を一時的に引き下げるというのは、足元の物価高対策にならず、また、短期的に税率を二度、変更する手間とコストを考えると、現実的な政策の選択肢たり得ないと思います。
ちなみに消費税率を3%から5%に引き上げたときは引き上げの法律改正が公布されてから引き上げまで28ヶ月、5%から8%に引き上げたときは19ヶ月かけています。
そもそも物価が上がっているときに減税や給付を大規模にやれば、それ自体がインフレに繋がります。
もし物価高対策が必要だと言うならば、物価上昇を超える賃上げを実現する政策が筋ですし、足許でも何か必要だということであれば、今の状況や影響など、データをよく見た上で、必要な世帯にピンポイントで給付する方がまだ意味があると思います。