毒入りの「あんこ」

2025.05.25

与党の一部と立憲民主党が、年金法案の修正を議論している。

メディアはこの修正を「基礎年金の底上げ」とか「あんこを入れる」などと報道しているが、大きな間違いだ。

まず第一に、厚生年金の積立金を国民年金に流用しようとしている。

どんなに屁理屈を並べようが、厚生年金の被保険者が年金のために負担した保険料を勝手に目的外利用することに変わりはない。

「税金」ならば、行政が予算案を通してその使い途を自由に決めて良い。

しかし、「保険料」は税金とは違って、自分と自分が所属するグループの年金のために被保険者が支払ったものだ。

その「保険料」を原資とする積立金を自分と無関係なグループのために使われる筋合いはない。

積立金を被保険者と無関係なものに流用するのは、かつてのグリーンピアと同じだ。

年金行政が国民の信頼を失った理由の一つは、被保険者が負担した保険料を厚労省が好き勝手に、無駄に浪費してきたことだ。

そもそもの厚労省案だって、まったく理屈なくマクロ経済スライドの調整率を三分の一にしようとしている。

ルール通りのスライド調整率だと次の再検証までにマクロ経済スライドが終わってしまって厚労省が困るという厚労省の勝手な理屈で、ルールになく、理屈で説明できない年金制度の変更を実施しようとしている。

保険料を負担している側からすれば、いちど支払って厚労省の懐に入った保険料は、厚労省が勝手に使える金になる。

こんなことを許し続けてはいけない。

第二に、「百年安心年金」のはずのものがわずか二十年で安心できなくなったために税金を投入しなければならなくなったが、その税金の財源のあてがない。

厚生年金の積立金の流用は、年金制度に税金を投入するための「言い訳」だ。

基礎年金は、二分の一を国庫負担することになっているので、厚生年金の積立金を流用して基礎年金に回せば、同額の税金を投入することになる。

次の百年間、毎年、二兆円から三兆円の税金が必要とされる、しかし、その財源について、厚労省も立憲民主党も全く明確にしていない。

これを「あんこ」というならば、「毒入りのあんこ」だ。

第三に、就職氷河期世代のためにこの修正をやるというが、基礎年金の金額は満額でも生活保護の金額に満たない状況に変わりはない。

そして就職氷河期世代の中には現役時代に年金保険料を未納、免除してもらった人も少なからずいるはずで、その場合、基礎年金はその満額をもらうこともできない。

この修正では、就職氷河期世代だけでなく、今後、未婚あるいは離婚した単身高齢女性が年金受給年令になると、その半分近くが生活保護水準以下の貧困に陥ると予測されていることを防ぐことはできない。

今、政治がやらなければならないのは、この修正ではない。

このままでは貧困に陥ってしまう年金受給者を救うための、年金制度の抜本改正だ。

保険料方式の年金制度では、現役時代に収入が少なく保険料を未納、免除にしてしまったことがあると、年金が減額されてしまう。

老後の生活の最低保障をするためには保険料方式ではなく、税方式、必要な者に最低保障をすることができる制度が必要だ。

高齢者の生活保護と年金を一元化して、老後の安心を提供できるセーフティネットをつくらねばならない。

どんな制度にして、誰にいくら最低保障年金を支給するのか、生活費だけでなく医療や家賃はどうするのか、この制度に必要なデータはどうするのか等など、議論しなければならないことはたくさんある。

こんないい加減な「修正」で、やるべきことを棚上げ、先送りするのはやめよう。



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