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英語でスピーチ
2024.06.01
外務大臣の時、アメリカのポンペオ国務長官と二人で朝食を食べながら北朝鮮について意見交換をしていたことがあります。
その時突然、国務長官が「一つ質問していいか」と訊いてきました。
「え、なんでもどうぞ」と答えると、真顔で「なんでいつもそう直裁的な話し方をするんだい」
「私の英語はアメリカの高校、大学時代に学んだ学生英語だから、外交官のようにもってまわったような話し方はできないんだ」と答えると、爆笑しながら「ハッハッハ、タローはそこがいいんだよ」
多くの外務大臣は、母国語でなくとも英語で会談します。
私のカウンターパートで例外だったのは、例えばフランスのルドリアン大臣、ロシアのラヴロフ大臣、中国の王毅大臣。
それでもロシアのラヴロフ大臣は、夕食会などで隣同士になると、英語でジョークを言いますし、二人だけで話をしようというと英語になります(私がロシア語をできないこともありますが)。
会議の中での公式なスピーチは原稿を用意して、それを読み上げるのが普通ですが、その後のディスカッションやバイ会談、食事会やコーヒーブレークはもちろん原稿なしでやらねばなりません。
ただし外務大臣が集まる会議などはまあなんとかなるものですが、大変なのは一般の参加者が大勢いるカンファレンスや大学やシンクタンクなどに招かれたときのスピーチです。
日本での講演のほとんどは、一時間のうち五十分講演して、最後の十分間、質問を受けて下さいというスタイルです。
そして質問もあまりでなくて主催者が用意していた質問だけだったり。
ところが私の母校ジョージタウンでの講演をはじめ、海外では、最初十分程度のスピーチをお願いします、その後、時間まで質問を受けて下さいというスタイルがほとんどです。
しかも「では質問をどうぞ」というと一斉に手が上がります。
これは結構痺れます。
もうこれは訓練しかありません。
私は初当選した翌年に、EUの招待で二週間、ブリュッセルとロンドンを訪問しましたが、その時にこのスタイルの講演の依頼がありました。
たぶんその時の私は、しどろもどろで相手方は驚いたと思います。
その時以来、海外出張時に講演の依頼が入れば必ず受けるようにしてきました。(もちろん英語のみですが)
やっぱり習うより慣れろで、なんとかこなせるようになりました(ホント?)。
海外のカンファレンスでパネリストなどを務めると、パネルが終わったときに、参加者がどのパネリストに集まるかで、評価がわかります。
自分の前にたくさん参加者が列を作ってくれるとほっとしますし、他のパネリストには人が集まっているのに自分の所には人が来ないと、がっくりしてとぼとぼとひきあげることになります。
議員でも官僚でも研究者でも企業人でも、若いうちから武者修行がおすすめです。
若いうちはうまくいかなくても、まあそんなものですし、そこで練習しておくからそれなりのポジションになったときには結果がついてきてくれます。
海外でスピーチするときのために私からのアドバイスをいくつか。
一、練習しましょう。
日本語でも講演は難しいのに、外国語でやるわけですから、練習できるところはやりましょう。
質疑応答も、こういう質問にはこう答えるということをあらかじめ想定しておくのは大事です。
二、何を話すか考えて、箇条書きにしておきましょう。
最悪なのは原稿を読み上げることです。
おもしろくありません。
書き言葉にするから、やたらと関係代名詞が入ったり、難しい単語が入ったり、訊いている方はよくわからなくなります。
読み上げるのに必死で、文章をどこで切ったらよいかなど考える余裕もなくなり、さらに何言っているのか、訊いている方はわかりません。
話すことを考えて、箇条書きにして、それを見ながら話しましょう。
三、笑いを取りましょう。
内容が薄くても面白ければ、内容が薄くてつまらないスピーチよりはましです。
スピーチの始めにジョークを言うというのが、アメリカでは作法のようになっていますし、そこでつかみをとれると相手もぐっと乗り出してくれます。
四、わかりやすい簡単な単語を使い、簡単な文章にしましょう。
難しい単語を使う必要はまったくありません。
どんな難しい内容でも、固有名詞と専門用語を除けば、日本の高校までに習う単語で言えるはずです。
なるべく関係代名詞などを使わずに、短い文章で、受験英語で言うところの単文で、話しましょう。
五、聞いている人の目を見ながら話しましょう。
結構、これ、照れますが、目が合うとリアクションしてくれる人もいます。
目が合う人が少ないと、話が受けていないな、刺さっていないなと感じて、軌道修正を試みたりします。
ただ、事前準備の範囲を超えた軌道修正は無理ですから。
六、手を使いましょう。
私は、話しながら、手のアクションを入れます。
最近はもう知らず知らずにやっていますが。
アクションを入れるとトーンが変わったり、声の大きさが変わったりして、平板にならないような気がしています。
七、外国語で話してやってんだい、という気持ちで。
こっちがそちらの母国語で話してんだから、そっちが理解しようと努めろよという気持ちで、完璧な英語を使おうとか思わない方がよいと思います。
ただ、そうは言っても理解されなければ意味ないので、英語の発音は努力しましょう。
英語の発音は、アクセントに気をつけましょう。
なるべく多くの日本人が、海外で話をして、日本の主張を世界に伝えることがこれから大事だと思います。
みんなでがんばりましょう。