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おすすめの一冊
2024.05.28
「シャルル・ドゥ・ゴール -自覚ある独裁」 佐藤賢一著 角川ソフィア文庫
ヨーロッパ、特にフランスを舞台とした歴史小説の名手、佐藤賢一によるドゴール元フランス大統領の評伝です。
本題に入る前に、余計な一言。
日本ですでに定着している固有名詞を、発音に近づけるなどさまざまな理由はあれど、わざわざ変えることに、私は違和感を抱いています。
シャルル・ドゴールという名前がすでに日本に定着している人物の評伝のタイトルをドゥゴールとすることにどんな意味があるのでしょうか。
ひょっとするとドゴールで検索したときに、検索漏れになるかもしれませんし、ドゴールと名前が似ているけれど違う人物だと思う読者がいるかもしれません。
かつて外務省が、ヨルダンをジョルダン、ベトナムをヴィエトナム、ノルウェーをノールウェイなどと国名、地名、人名を独自表記して悦に入っていたことがありますが、いい迷惑でした。
そもそもLとRの区別やSとTHの区別をカタカナ表記できないのに、また、その他、カタカナ表記では表せない発音が少なからずあるのに、定着している表記と違う書き方をして混乱を招く必要はないのではないかと思います。
余計な一言が一言以上になりました。
それはともかくとして、ドゴールのことを知りたいと思ったら、さすが佐藤賢一、わかりやすく非常によい本です。
ドゴールが第二次大戦のフランスの英雄ということを知っている人は日本にもたくさんいると思いますが、「ナチスドイツに占領されているフランスのどこでドゴールは戦っていたのですか」という質問をされたことがありますし、フレデリック・フォーサイスの「ジャッカルの日」で、なぜ、彼らはドゴールを暗殺しようとしていたのか、実は、実際のドゴールの活動をくわしく知らないという人は多いのではないでしょうか。
ドゴールが若い頃のペタン元帥との関わりから、第二次大戦初期のドイツがフランス侵略を始めたときの様子、そこからドゴールがフランスを脱出し、パリ解放、終戦までのドゴールの活躍とチャーチルやルーズベルトとの確執、政界引退、アルジェリア危機と政界復帰、第五共和制まで、ドゴールという人物を余すところなく描いています。
第二次大戦初期のイギリスの危機とチャーチルを描いた映画が近年公開され、チャーチルは再び脚光を浴びましたが、同じ第二次大戦時の国のリーダーでもあまり知られていなかったドゴールついて知るいい機会です。
梅雨時の晴耕雨読にぜひ。