リアルかオンラインか
2024.04.02
G7のデジタル大臣会合がイタリアのトレントで開催されました。
3月14日木曜日に日本を発って、宿泊先のヴェローナまで20時間、金曜日の朝にヴェローナからトレントまで車で1時間15分ほど。
金曜日に閣僚会合とバイ会談をやって、最後は車でヴェローナまで戻って宿泊先のホテルのレストランでEUのヴェステア上級副委員長とワーキングディナー。
土曜日の午後にヴェローナを発って、フランクフルト経由で日曜日の夕方6時に羽田着。
そんなに移動が大変ならば、デジタル大臣会合だし、なぜ、オンラインでやらないのというご意見もあると思います。
例えば日本がG7の議長を務めた昨年末、デジタル大臣会合をオンラインでやったことがあります。
これは高崎でやったデジタル大臣会合と広島でのサミットの合意事項をフォローアップするための会合でした。
そもそも当初は予定になかった会合でしたので、G7(7カ国とEU)の閣僚を日程調整してリアルで集めるのは大変ですし、フォローアップとしてやらねばならないことも決まっていたし、年末までにやらないと日本の議長が終わってしまうということでオンラインになりました。
しかし、これは例外で、ほとんどの場合、閣僚会合はリアルです。
閣僚会合の成果物は、多くの場合、宣言文書ですが、スムーズに事務方で合意できる場合もあれば、閣僚の議論に任されることもあります。
例えば2018年4月にトロントで行われたG7外相会合では、ミャンマーをめぐって成果文書の交渉が紛糾し、最後は私とイギリスのボリス・ジョンソン外相が差しで話し合って決着させました。
オンラインではなかなかこうはいきません。
あるいは、閣僚同士が用意された演説のテキストを離れて自由に議論することもあります。
今年の2月に行われた日本とASEANのデジタル大臣がデータガバナンスについて議論した会合では、かなり率直なやりとりがあり、各国ともより理解が深まったと喜んでいました。
これもその場の雰囲気で、議論になだれ込んだ気がします。
また、こうした会議では、閣僚の多くが集まるので、それぞれ二カ国間の会談(バイ会談)の良い機会になります。
バイ会談が終わった後、非常に機微な話を、事務方を交えずに閣僚同士のテタテ(二人だけで話すこと 語源はフランス語のtête à tête)で行うということがよくあります。
今回も、アメリカとバイ会談の後、機微なやりとりがありました。
確かによく知っているもの同士が、あらかじめ決められた議題をこなしていくだけならば、オンラインでもよいのかもしれません。
しかし、やはり相手の顔色や態度を見ながら、こう言っているけれど実際にはどうなのかというところを見極めるのは、リアルの方が向いています。
あるいは議論が続く中で、ちょっと横で落としどころを探る話し合いをするということもリアルである話です。
さらに重要なのが会議の期間の食事やコーヒーブレークです。
飯を食べながら腹を割って話す、あるいはコーヒーを飲みながら意見交換して、相手をよく知る、自分という人間や考えを知ってもらうのは、たいへんに大事です。
トロントのG7外相会合では、ウクライナ問題を議論するブランチがカナダのフリーランド外務大臣の自宅で開催されました。
その時の私のブログです。
「フリーランド外相の私邸でのブランチでG7外相会合がスタートしました。
セミデタッチと呼ぶのでしょうか、二軒が横につながっている家で、その一階に大きなテーブルを入れてのブランチです。
私邸で、お子さんたちが料理するものをG7外相が食べるという、なんてアットホームなブランチでしょうか。
彼女は小さいころ両親が忙しく、ウクライナ移民のおばあちゃんにウクライナ語で育てられたそうです。
フィナンシャルタイムズの記者として活躍した後、政界入り。
家では、夫とは英語で、三人の子供とはウクライナ語で会話しているそうです。
最初の三十分はG7の外相での社交のブランチでしたが(ジョンソン英外相はまだ飛行機の中)、三十分後にウクライナのクリムキン外相が参加してからはウクライナ問題がテーマのワーキングブランチ。
今回の外相会合は、ジェンダーと共にウクライナ、ロシア、そして中国がそこここで議題になりました。
子供たちは、この日のために練習したというワッフルとチーズケーキをふるまってくれました。さらに、スモークサーモンとポーチドエッグが仕出しで。お腹いっぱいです。
ちなみに今回のG7に関連する場所はすべてフリーランド外相の選挙区でした。」
また、このときは、女性の外相が集まる会合がG7前夜に開催されました。
女性外相とG7の外相に招待状が送られ、私は参加しましたが、男性の外相は私がたった一人でした。
でも、おかげでこの後、女性の外相とはすっかり仲良くなり、いろいろとお互い支援しあってさまざまなことをスムーズに進めることができました。
また、国連で日本が提出した議案に賛成してもらうために、顔見知りの外務大臣に直前に電話をかけまくったこともありました。
わざわざタローが電話してきてくれたからと、反対或いは棄権する予定だった国が賛成に回ってくれたこともありました。
国を背負っていても、外交や国際交渉のさまざまな場面では、やはり人と人のつながりが大切です。
だからこそ、オンライン会議全盛の今日でも実際に足を運ぶというのが求められるのだと思います。