海上自衛隊創設70周年記念式典祝辞

2022.04.26

海上自衛隊創設70周年記念式典で来賓代表として祝辞を述べました。少し長いですが、お読みください。

海上自衛隊の創設70周年、誠におめでとうございます。

太平洋戦争の敗戦後、今日に至るまで、日本は他国と戦火を交えることなく、国民の平和な暮らしを守ることができました。

日米同盟と共に、自衛隊の存在が、この長年の平和に大いに寄与してきたことはいうまでもありません。

私自身、防衛大臣として、諸君と共に活動することができたのは、大変に名誉なことであり、私の人生のなかでもかけがえのない経験でありました。

日本各地の総監部や幹部学校はもとより、護衛艦隊や潜水艦隊から、南鳥島航空派遣隊にいたるまで、さまざまな部隊を訪問し、多くの船や基地でたくさんのカレーを食べ、護衛艦「まや」の進水式も執り行いました。

心残りは2019年の観艦式を中止せざるを得なかったことでありました。

海上自衛隊は、2009年3月から、ソマリア沖・アデン湾において、海賊対処活動を始め、2015年5月には初めて多国籍部隊司令官となるCTF151司令官を派遣するに至り、海上自衛隊による海賊行為の未然防止は、国際社会からも高く評価されるようになりました。

そして、それは護衛艦と哨戒機による、中東方面における日本関係船舶の安全確保のための情報収集活動につながりました。2020年1月10日、私の誕生日でありましたが、オマーン湾、アラビア海北部及びバブ・エル・マンデ ブ海峡東側のアデン湾の三海域の公海を活動海域とする、護衛艦「たかなみ」及びP-3C2機による情報収集活動の実施を命じました。

私も、現地で起きうるさまざまな状況に対処できるよう繰り返されたシミュレーションや、隊員のご家族への説明会にも参加し、諸君が万全の体制で活動するための準備を行っている場面を目の当たりにしました。

コロナ禍の中東での活動は、上陸にも制限がかけられ、隊員諸君の苦労は筆舌に尽くしがたいものがあったと思いますが、日本関係船舶の安全な航行を担保する、国際的にも評価される活動になりました。

陸上自衛隊や航空自衛隊と比べ、長期間、家族と離れ、海上の艦船で活動しなければならない海上自衛隊は、人材の確保に一層の努力が必要な状況が続いています。国民の命と平和な暮らしを守る自衛隊、その中でも日本の領海にとどまらず、日本のシーレーンも守る海上自衛隊に有為な人材を集めるためには、永続的な隊員の待遇改善が必要です。

私が防衛大臣だったとき、災害派遣の視察に行くと、活動していた隊員が、必要な備品を自腹で購入していたことがありました。それどころかトイレットペーパーを自費で購入していた部隊もありました。こうしたことがあってはならないと、今後、予算の制約でトイレットペーパーとF35のどちらかしか購入できないということがあったら、迷わずにトイレットペーパーを購入すると発言したことがあります。ところがトイレットペーパーを予算化する時に、陸海空それぞれで基準となる一人一か月あたりの必要な長さがバラバラでした。まさか海の上に出ると必ず便秘になるわけではないだろうと、日本トイレ協会に尋ねて陸海空の基準を統一したことがありました。

少子高齢化が進む日本で、若い隊員、特に任期制の隊員の採用を充実させることは大変重要であり、今後、ますます難しくなります。そのためにもさまざまな施策が欠かせません。

警察や消防と比較しての初任給の改善などはもとより、たとえば最初の任期を終えた任期制隊員が民間に就職するにあたって、一般の新卒者と比べ、すでに規律やチームワークの大切さを理解していることは明白ですから、企業側に第二新卒として、新卒採用以上の条件での採用をお願いしました。

また、高校を卒業して任期制隊員となり、任期後に大学進学を目指す隊員に学費の一部を支援することも始めました。今後はさらにその支援を拡大し、後に幹部となって戻ってくる隊員が増えてくれることも期待したいと思います。

 

日本は、まわりを海に囲まれた海洋国家であり、海岸線の長さでも排他的経済水域の面積でも世界第6位を誇ります。資源の少ない我が国は、エネルギーや食糧をはじめ、外国からのさまざまな資源や物資に依存し、自動車をはじめ我が国の産業は海外の市場を必要としています。我が国の輸出入の9割以上は、海上を輸送されており、航行の自由と安全の確保が我が国の繁栄に欠かせません。

しかし、我が国周辺では、力による一方的な現状変更の試みや、国際法や確立された国際秩序とは相容れない自国の権利の主張などが行われています。東シナ海はもとより、台湾海峡や南シナ海など、日本周辺の海域は、年々その不安定さを増しています。かつてのように米国が圧倒的な軍事力を誇り、世界の警察官の役割を果たせる時代ではなくなりました。これからの日本は、国民の命と平和な暮らしを守るために、日米同盟を基軸としながらも、国際情勢の変化に応じた対応をしていかなければなりません。

プーチンによるウクライナ侵略は、これまでの国際秩序と安全保障に関する考え方を大きく変えました。

これまでのように日本だけを守る、日本だけを守れればよいという考え方が通用する世界であり続けるでしょうか。

もちろんこれからも日本の防衛の基軸は日米同盟であることにかわりはありません。しかし、独裁政権による力による現状変更の試みが、我々と同じ、民主主義、法の支配、基本的人権といった共通の価値観を持つ国や地域に対して行われた時に、価値観を共有する国々が結束してそれを守ることが必要になるのではないでしょうか。

近年、イギリス、フランス、ドイツなどヨーロッパ各国が太平洋に海軍の艦船を派遣し、海上自衛隊とも共同訓練を行う場面が増えてきました。また、海上自衛隊が活動する中東の海でも共同訓練が行われるようになりました。太平洋にピトケアン島を有するイギリスは、TPPへの加盟を求めるなど太平洋との関与を強めようとしています。また、南太平洋にフランス領ポリネシアやニューカレドニアを有するフランスは、太平洋国家であると自認し、太平洋での活動を強めています。日米同盟に加え、オーストラリア、ニュージーランドや韓国、フィリピンをはじめ、こうしたヨーロッパの国々をも含めたインド太平洋の平和と安定を守る枠組みが必要になってくるのではないでしょうか。

ヨーロッパには集団的安全保障のためのNATOがありますが、アジアには同様の組織がありません。AUKUSやQUADあるいはファイブアイズという枠組みが立ち上がっていますが、それで充分でしょうか。日本は、どうかかわるべきでしょうか。

そして、第二次大戦後、世界の繁栄のために、平和と安定を守るために設立された国連の安保理が機能不全に陥っています。討論の場としての国連は機能しているかもしれませんが、侵略の当事者であるロシアが拒否権を持って安保理に座っている以上、安保理の具体的な行動には期待できません。

今こそ、我々は、機能する国連を創りあげなければなりません。しかし、国連憲章を改正しようにも拒否権がそれを妨げます。それならば、かつてイギリスから独立した十三の植民地の歴史に習うべきです。独立を目指す十三の植民地は、まず、連合規約を作り、政府を立ち上げました。しかし、連合規約では政府に徴税権も通商を規制する権限もなく、政府は機能できませんでした。連合規約を改正するためには全ての州の賛成が必要とされ、改正することもできませんでした。そこで十三の州は、合衆国憲法を新たに作成し、それを批准することで、それ以前のものを無効にするという方法をとりました。

拒否権が国連憲章の改正も妨げるならば、我々は新たな国連憲章2.0を採択するという方法で、誰も拒否権を持たない、侵略者に共同で向き合う新しい国連2.0を創設すべきです。

プーチンによるウクライナ侵略は、これからの戦いのあり方も示唆しています。

かつて大艦巨砲主義から航空戦力重視に戦い方が変わったように、無人、低コスト、分散の時代へと移り変わりつつあるのではないでしょうか。

新しいキルチェーンを想定しながら、必要な戦略、戦術、戦い方を考え、必要な装備の開発を進めていかなければなりません。各幕がばらばらに予算を要求し、結果として研究開発にまわる予算が足りなくなるということは避けなければなりません。しかし、防衛予算全体のあり方、端的に言えば予算規模に関する議論は必要です。通常は護衛艦の窓は防弾になっておらず、海外に派遣される時に防弾ガラスを設置しているという説明を、大臣時代に受けて驚きました。弾薬が足りない、部品が足りないということが、予算要求のなかで、日常茶飯になっている、あるいは装備品の発注が平準化されていないため、受注する企業も生産ラインを立ち上げられずに手作業で製造しているという実態も見過ごせません。

海上自衛隊の場合、日本の造船業の衰退のなかで、艦船の発注をどうしていくのかということを含め、安定したサプライチェーンを構築しなければ戦えません。そして安定したサプライチェーンを築くためには、艦船を含めた装備品の海外輸出を積極的に後押ししていくことが必要になります。

海上自衛隊創設からの期間が、もうすぐ旧帝国海軍の長さを超えます。

70年前、民主主義の下で新たなスタートを切った海上自衛隊は、以来、我が国の平和と安全のため、ひたむきに汗を流し、国民の支持を得てきました。海上自衛隊がこれからもその尊い使命を果たし続けることを願って、私の祝辞といたします。



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