東アジアの安全保障の現実

2020.05.18

5月13日付の毎日新聞に「軍縮の道こそ探るべきだ」というタイトルの社説が載った。
 
まず冒頭から事実誤認。
 
「米露両国による中距離核戦力(INF)全廃条約の失効を受け、中距離ミサイルを日本に配備する案が日米間で浮上している。
 
アジア配備の検討を進める米国が在日米軍基地などを候補に日本側と協議しているという。」
 
そのような協議はされていない。
 
「米国が日本にミサイルを配備すれば、米中露による激烈な軍備拡張競争につながる。その最前線に日本が立つ危険な構想だ」と続く。
 
この間、INF全廃条約に縛られることなく軍備を拡張してきたのは、中国だ。
 
この10年間に中国の軍事予算は実に2倍になっている。
 
日本周辺の各国の2019年度の国防費を2009年度の国防費と比べると、防衛白書で示しているとおり、
ロシア 2.62倍
中国  2.52倍
韓国  1.61倍
豪州  1.45倍
日本  1.06倍
米国  1.02倍
 
つまり、軍備拡張競争を主導してきたのは、中国とロシアだ。
 
日本を射程に収めている中国のミサイルは千数百発以上といわれ、日本を、こうしたミサイルの最前線に立たせてきたのは中国だ。
 
この社説は、「INF全廃条約の対象外で制約を受けない中国がミサイル技術を開発し、保有数を増やしてきた」と淡々と述べる。
 
そして、「量でなく質で対抗するとしても、最新鋭の高性能ミサイルの開発にしのぎを削れば歯止めのない軍拡が進む。米軍が新型のミサイルを潜水艦に『核付き』で搭載する可能性もある。アジアでの核の脅威は増大するだろう」。
 
中国は、「ミサイル技術を開発し、保有数を増やしてきた」けれども、これは軍拡ではなく、中国の潜水艦はミサイルを『核付き』で搭載できるが、アジアでの核の脅威は増大しなかったのだろうか。
 
この社説の最後は、「日本は対米追従から脱し、米露に中国を加えた新たな時代の軍縮交渉の実現にこそ努力すべきだ」とある。
 
新たな軍備管理枠組みには米露だけでなく中国も加わるべきだというのは、世界のコンセンサスになりつつあり、私が外務大臣の時代から日本もそれに向けて様々な提案をし、努力をしている。
 
中国が尖閣諸島や東シナ海、南シナ海をはじめ、各地で緊張関係を創り出している中で、日米同盟は、日本の安全保障だけでなく、この地域の平和と安定に必要な公共財であるという認識は、少なくともアジア・太平洋地域の民主国家の間では共有されている。
 
ポストコロナには、民主主義と独裁・権威主義、自由社会と監視社会の対立という時代が来る可能性があり、価値観を共有する国々は今からそれに備える行動をすべきだという認識も、各国の閣僚レベルで共有され始めている。
 
安全保障を考える上で、サイバー戦、宣伝戦、ハイブリッド戦ということが言われるようになった。
 
SNSやメディアを通じて相手の社会にフェイクニュースを流し、自国に都合のいい世論を形成し、相手の安全保障政策に影響を及ぼすということが現に行われている。
 
まず、軍備を拡張し続けてきたのはどこなのか、日本に対する脅威や懸念をもたらしているのはどこなのか、民主主義や自由社会に対抗しようとしているのはどこなのか、ということをしっかり考えて、安全保障の議論をしなければならない。
 
我が国の領海で無害通航ではない航行を行っているのはどこの国の船舶なのか、毎日のように自衛隊が対領空侵犯措置を執らなければならないのはどこの国なのか、日本を守るために、自国の若者を訓練し、即応態勢を維持してくれてるのはどこの国なのか、東アジアの安全保障の現実を、しっかりと世の中に認識してもらう必要がある。



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