おすすめの一冊
2020.01.20
久しぶりに不定期連載(!?)のおすすめの一冊です。
「Inside the Five-Sided Box」 by Ash Carter
オバマ政権で国防長官をつとめたアッシュ・カーターの回顧録です。
アッシュ・カーター氏は、1981年に初めて国防省の仕事をしてから、1993年から1996年に国防次官補、2009年から2011年に国防次官、2011年から2013年に国防副長官と、民主党、共和党を問わず11人の国防長官に仕え、2015年から2017年まで国防長官を務めました。
私が防衛大臣に就任してまもなく、マレーシアの国防副大臣が来日して防衛省で会談し、記念品の交換というときに先方から「この本が面白かったから差し上げます」といただいたのがきっかけで、この本を読み始めました。
この本の第1章は、「How Not to Waste $700 Billion」というタイトルで、国防省の調達に関する話から始まります。
Joint Strike Force(JSF)と呼ばれたF-35やKC-46空中給油機の開発コストをいかに抑えるかという話からいきなり始まります。
アフガニスタンやイラクで、どうやってIEDから米軍兵士を守るか、そのためにMRAP(mine-rsistant, ambush-protected vehicles)またはMATV(MRAP all-terrain vehicle)をどうやって開発したか、そしてカーター氏の初めての国防省での仕事となる1981年のMXミサイルの配備やスターウォーズと呼ばれたミサイル防衛の実現可能性の評価など、事実に基づいて政策を決めていくことの重要性が浮き彫りにされていきます。
次世代戦闘機の開発をどう進めるか、あるいは防衛省の予算の中からいかにして隊員のためのトイレットペーパーや災害派遣用の簡易ベッドの購入費をひねり出すかと考えていた私にとって、思わず引き込まれるものでした。
さらにどの章を読んでも、どうやって科学の専門家を政府で採用したらよいのか、どうやって国防長官として軍の1人1人にコミュニケーションしたらよいのか、国防長官としてどうやって毎日の米軍の行動を把握するのかなどなど、新米の防衛大臣にとって、ふむふむということが多い一冊でした。
国防長官とはどんな仕事をしているのか、あるいは軍隊を文民統制するとはどういうことかといったことに興味のあるに、是非おすすめです。
残念ながら、まだ、翻訳はないようです。